歯茎が腫れて痛いときはどうする?原因と対処方法を現役歯科医師が解説
- 山浦 泰明

- 3月10日
- 読了時間: 11分

突然歯茎が腫れて、痛みを感じた経験はありませんか?
歯茎の腫れは、多くの方が一度は経験する身近なトラブルです。しかし、その原因はさまざまであり、放置すると症状が悪化してしまうこともあります。
歯茎の腫れは、むし歯や歯周病、親知らずの炎症など、複数の要因が考えられ、痛みが一時的に治まったとしても、根本的な原因が解決されていなければ、再び症状が現れる可能性が高いです。
実際、厚生労働省の調査によれば、日本人の約半数が進行した歯周病を抱えているというデータもあり、歯茎のトラブルは決して他人事ではありません。
本記事では、歯茎が腫れる原因や、歯科医院での治療方法について、山浦歯科医院の院長が現役歯科医師の視点から詳しく解説していきます。
歯茎が腫れる主な原因
歯茎の腫れには、さまざまな原因が隠れており、適切な対処をするためには、まず原因を理解することが大切です。
ここでは、代表的な原因について詳しくご説明します。
歯周病(歯肉炎・歯周炎)
歯周病は、歯茎が腫れる最も一般的な原因のひとつです。
歯の表面や歯と歯茎の境目に付着したプラーク(歯垢)の中に存在する細菌が、歯茎に炎症を引き起こします。
初期段階である歯肉炎では、歯茎が赤く腫れたり、歯磨きの際に出血したりする症状が見られます。
この段階では痛みを感じないことが多く、気づかないうちに進行してしまうケースも少なくありません。
歯肉炎が進行すると、歯周炎へと移行します。
歯周炎になると、歯を支える骨が徐々に溶けていき、歯茎が大きく腫れたり、膿が出たりすることもあります。
厚生労働省の令和4年歯科疾患実態調査によると、歯周病の診断項目の一つである「4mm以上の歯周ポケット」を持つ人の割合は全体で47.9%にのぼり、年齢が高くなるほどその割合は増加する傾向にあります。
歯周病は「静かなる病気」とも呼ばれ、自覚症状が少ないまま進行することが特徴で、疲労やストレスで免疫力が低下したときに、急に症状が悪化することもあります。
むし歯の進行による影響
むし歯が進行して歯の神経まで達すると、歯髄が感染を起こし、後に歯茎が腫れることがあります。
そのように歯の神経が感染して神経が死んでしまった歯や、以前に神経を取る治療を受けた歯では、根の先端に炎症が起きることがあります。
この状態を根尖性歯周炎といいます。
歯の根の先端に細菌感染が波及し、膿がたまると、歯茎がぷっくりと腫れ上がり、強い痛みを伴うことがあります。
時には、歯茎の表面に白いできもの(フィステル・サイナストラクト)が現れ、そこから膿が出てくることもあります。
神経を抜いた歯は痛みを感じないため、基本的には問題に気づきにくいのですが、免疫力が下がったときなどに、突然腫れや痛みとして症状が現れます。
親知らずの炎症(智歯周囲炎)
親知らずが原因で歯茎が腫れることもよくあります。
特に、親知らずが斜めに生えていたり、一部だけ顔を出している場合、歯と歯茎の間に汚れがたまりやすく、細菌が繁殖して炎症を起こします。
この状態を智歯周囲炎と呼び、親知らずの周囲の歯茎が大きく腫れ、口を開けにくくなったり、喉の痛みを伴ったりすることもあります。
智歯周囲炎は一度治まっても、根本的な原因である親知らずが残っている限り、再発を繰り返すことが多いのが特徴で、重症化すると、顔全体が腫れたり、発熱したりすることもあるため、早めの対処が必要です。
歯根破折による歯茎の腫れ
歯の根が割れてしまう歯根破折も、歯茎の腫れを引き起こす原因のひとつです。
特に、神経を取った歯は健康な歯に比べてもろくなっており、強い力がかかると割れやすくなります。
歯根が割れると、そこから細菌が侵入し、歯茎に炎症を起こします。
歯茎が腫れたり、膿が出たりするだけでなく、噛んだときに痛みを感じることもあります。
歯根破折は、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方に起こりやすく、硬いものを噛んだときに突然発生することもあります。
その他の原因
上記以外にも、歯茎が腫れる原因はいくつかあります。
歯ブラシで歯茎を強く磨きすぎて傷つけてしまったり、食べ物が当たって歯茎を傷つけたりすることで、一時的に腫れることがあります。
また、ホルモンバランスの変化により、妊娠中の女性は歯茎が腫れやすくなることも知られています。
まれなケースとして、歯茎の腫瘍や嚢胞が原因となることもあります。
これらは良性のものが多いですが、中には悪性のものもあるため、原因不明の腫れが続く場合は、必ず歯科医院を受診することが大切です。
歯茎の腫れに伴う主な症状
歯茎の腫れに伴う代表的な症状には、以下のようなものがあります。
痛みや不快感:腫れた部分に鈍い痛みやズキズキとした痛みを感じることがあります
出血:歯磨きのときや食事中に、歯茎から出血しやすくなります
赤みや変色:健康な歯茎はピンク色ですが、炎症が起きると赤く腫れ上がります
膿の発生:歯茎に膿がたまり、白いできものができたり、口の中に嫌な味がすることがあります
口臭:細菌の繁殖により、口臭が強くなることがあります
歯のぐらつき:歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けて、歯がぐらつくようになります
これらの症状は、原因によって現れ方が異なります。
特に、歯茎の炎症を起こしている場合は、早期の治療が必要になるため、症状に気づいたら早めに歯科医院を受診しましょう。
歯茎が腫れたときに自分でできる対処法は
歯茎が腫れて痛みがあるとき、すぐに歯科医院を受診できれば良いのですが、夜間や休日など、すぐに診てもらえない状況もあります。
そのようなときに、自宅でできる痛みに対する応急処置の方法としては、ロキソニンやイブプロフェンなど、市販の痛み止めを服用するのも一つの方法です。
ただし、痛み止めは、あくまでも痛みを一時的に和らげるためのものであり、原因を治療するものではありません。
また、持病がある方や他の薬を服用している方は、事前に薬剤師に相談してから使用することをおすすめします。
十分な休養をとり免疫力を高める
歯茎の腫れや痛みは、疲労やストレスで免疫力が低下しているときに起こりやすい傾向があります。
体が弱っているときは、普段は問題にならない細菌に対しても抵抗力が落ちてしまうため、無理をせず、体をゆっくり休めることも大切な対処法のひとつです。
十分な睡眠をとり、栄養バランスの良い食事を心がけることで、免疫力を回復させることができます。
ただし体を温める行動にも注意が必要で、入浴や激しい運動、飲酒は血行を良くするため、一時的に腫れや痛みが強くなることがあります。
症状が落ち着くまでは、シャワー程度にとどめ、アルコールも控えるようにしましょう。
絶対にやってはいけないこと
応急処置として、絶対に避けるべき行為もあります。
まず、歯茎にたまった膿を自分で出そうとすることは厳禁です。
指で押したり、針で突いたりすると、細菌感染を引き起こし、症状をさらに悪化させる恐れがあります。
膿を出しても、根本的な原因は解決されないため、必ず歯科医師に処置してもらうようにしましょう。
また、患部を必要以上に触ることも避けてください。
気になって舌や指で触りたくなるかもしれませんが、刺激を与えると炎症が悪化する可能性があります。
歯科医院で行われる治療方法
自宅での応急処置で一時的に症状が和らいでも、根本的な原因を取り除かなければ、症状は再発してしまいます。
ここでは、歯科医院で行われる主な治療方法についてご説明します。
歯茎の腫れの原因によって、治療方法は異なりますので、歯科医師が詳しく検査を行い、適切な治療計画を立てていきます。
歯周病に対する治療
歯周病が原因で歯茎が腫れている場合、まずは歯の表面や歯周ポケット内のプラークや歯石を除去する処置を行います。
これをスケーリングやルートプレーニングといいます。
歯石は歯ブラシでは取り除くことができないため、専用の器具を使って丁寧に除去していきます。
歯周ポケットが深い場合は、麻酔をして歯茎の中の歯石まで取り除くこともあり、症状が強い場合は、抗菌薬や消炎鎮痛薬を処方することもあります。
また、歯周病が進行している場合は、歯周外科手術が必要になることもあります。
むし歯や根の病気に対する治療
むし歯が原因で歯茎が腫れている場合は、その原因が神経に感染を起こしてしまっていることなので、むし歯を取り除き、神経の治療(根管治療)を行います。
根管治療といって、根管内を清掃・消毒し、細菌を取り除く処置を行います。
根管治療には数回の通院が必要になることが多く、症状が重い場合は、まず抗菌薬で炎症を抑えてから、本格的な治療に入ることもあります。
根の病気が再発を繰り返す場合や、通常の根管治療では治らない場合は、歯根端切除術という外科的な処置を行うこともあります。
親知らずの治療
智歯周囲炎が原因の場合、まずは抗菌薬や消炎鎮痛薬で炎症を抑えます。
炎症が落ち着いたら、親知らずを抜歯するかどうかを検討します。
親知らずが正常に生えていない場合や、繰り返し炎症を起こす場合は、抜歯を勧められることが多いです。
その際に歯茎を切開したり、骨を削ったりする必要がある場合もあり、術後に腫れや痛みが出ることもあります。
歯根破折の治療
歯根が割れている場合、残念ながら保存することが難しいケースが多いです。
割れ方や範囲によっては、接着剤で固定したり、破折した部分だけを取り除いたりすることもありますが、多くの場合は抜歯が必要になります。
抜歯後は、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどの方法で、失った歯を補う治療を行います。
どの治療方法が適しているかは、お口の状態や生活習慣、ご希望などを総合的に考慮して決定していきます。
歯茎の腫れを予防するために大切なこと
歯茎の腫れを予防するためには、日々のセルフケアと定期的な歯科検診が欠かせません。
ここでは、予防のために心がけたいポイントをご紹介します。
毎日の丁寧な歯磨き
歯周病やむし歯の最大の原因はプラークです。
毎日の歯磨きで、しっかりとプラークを除去することが予防の基本となります。
特に就寝中は唾液の分泌が減少するため、細菌が繁殖しやすくなるため、寝る前の歯磨きは念入りに行うことが大切です。
また、歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを完全に取り除くことはできません。
そのため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、より効果的にプラークを除去できます。
歯磨きの方法がわからない場合や、磨き残しが多い場合は、歯科医院でブラッシング指導を受けることをおすすめします。
定期的な歯科検診とクリーニング
どんなに丁寧に歯磨きをしていても、すべてのプラークや歯石を自分で取り除くことは困難です。
定期的に歯科医院を受診し、プロフェッショナルケアを受けることが重要です。
歯科検診では、むし歯や歯周病の早期発見ができるだけでなく、プロによるクリーニングで、普段の歯磨きでは取り切れない汚れを除去できます。
検診の頻度は、お口の状態によって異なりますが、3か月に1回程度が目安とされています。
歯周病のリスクが高い方や、以前に歯周病の治療を受けた方は、より頻繁なメンテナンスが必要になることもあります。
令和5年の国民健康・栄養調査によると、過去1年間に歯科検診を受けた人の割合は58.8%という結果が出ていますので、まだ検診を受けていない方は、ぜひこの機会に受診を検討してみてください。
生活習慣の見直し
歯茎の健康は、生活習慣とも深く関わっています。
バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレスの軽減など、健康的な生活を心がけることで、免疫力が高まり、歯周病のリスクを減らすことができます。
特に喫煙は、歯周病の最大のリスク要因のひとつで、タバコに含まれる有害物質が歯茎の血流を悪くし、免疫機能を低下させるため、喫煙者は非喫煙者に比べて、2〜8倍も歯周病にかかりやすいという報告もあります。
喫煙は歯周病の治療効果も下げてしまうため、歯茎の健康を守るためにも、禁煙を検討することをおすすめします。
また、糖尿病がある方も、歯周病のリスクが高くなることが知られています。
糖尿病と歯周病は相互に影響し合うため、両方の管理を適切に行うことが大切です。
早期発見・早期治療
歯茎の異変に気づいたら、できるだけ早く歯科医院を受診することが大切です。
「少し腫れているけど、そのうち治るだろう」と自己判断で放置すると、症状が進行してしまう可能性があります。
特に、歯周病は自覚症状が少ないまま進行することが多いため、以下のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
歯茎が赤く腫れている
歯磨きのときに出血する
歯茎から膿が出る
口臭が気になる
歯がぐらぐらする
冷たいものや熱いものがしみる
初期段階で適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、歯を守ることができます。
歯茎の腫れでお悩みなら山梨県甲府市の「山浦歯科医院」
歯茎の腫れは、歯周病やむし歯、親知らずの炎症など、さまざまな原因によって引き起こされます。
一時的に症状が治まったとしても、根本的な原因が解決されていなければ、再び腫れや痛みが現れる可能性が高いため、注意が必要です。
歯茎の腫れや痛みを感じたら、自己判断で放置せず、早めに歯科医院を受診しましょう。
山梨県甲府市の山浦歯科医院では、患者様一人ひとりの症状に合わせた適切な診断と治療を行っております。
歯茎の腫れでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」
厚生労働省「令和5年患者調査の概況」
厚生労働省e-ヘルスネット「歯周疾患の有病状況」
日本生活習慣病予防協会「8020達成者が2人に1人、その一方で歯周病の人も2人に1人」
厚生労働省「医療広告ガイドライン」




