
歯周病治療
Periodontal-Treatment
歯周病とは?
歯周病(ししゅうびょう)とは、歯を支えている骨(歯槽骨)や歯ぐきが炎症によって破壊されていく病気です。
主な原因は、歯と歯ぐきの境目に溜まる歯垢(プラークやバイオフィルムとも呼びます)中の細菌です。
初期の段階では「歯ぐきが腫れる・出血する」といった軽い症状から始まりますが、進行すると歯を支える骨が溶け、最終的には歯がぐらついて抜け落ちることもあります。
歯周病は自覚症状がほとんどないまま進行する「沈黙の病気」と呼ばれており、気づいたときには重症化していることも珍しくありません。
歯周病の進行プロセス
歯肉炎
歯肉炎(しにくえん)とは、歯の表面に歯垢(プラーク・バイオフィルム)が溜まることで歯ぐきに炎症が起きる状態を指します。
歯ぐきの赤みや腫れ、歯みがき時の出血が見られますが、痛みがほとんどなく気づきにくいのが特徴です。
この段階では、歯を支える骨はまだ健康な状態であり、正しいブラッシングや歯科でのクリーニングにより元の健康な歯ぐきに戻せます。
ただし、放置すると骨が溶けはじめ、「歯周炎」へと進行します。
歯周炎ステージⅠ(軽度歯周炎)
歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ減ってきた場合、歯肉炎から歯周炎へと進行したと診断されます。
歯周病の初期段階であり、歯槽骨の吸収が見られるものの、歯周ポケットの深さは4mm以下と比較的浅く、炎症や損傷はまだ軽度の状態です。
この段階では、歯ぐきの炎症や出血が起こることがありますが、歯のぐらつきはほとんどなく、適切なケアで健康な状態に戻すことが可能です。
歯周炎ステージⅡ(中等度歯周炎)
歯周炎が進行し、歯槽骨の吸収がさらに進んだ状態です。
歯周ポケットの深さは4〜5mm程度に拡大し、歯ぐきからの出血や腫れ、口臭などが見られます。
まだ歯のぐらつきは少ないものの、歯周組織の破壊が始まっているため、治療が必要な段階です。
歯科医師による診断と治療計画のもと、炎症を抑える処置と定期的な管理を行うことで進行を止めることができます。
歯周炎ステージⅢ(重度歯周炎)
歯周病がかなり進行し、歯周ポケットが6mm以上に深くなった状態です。
歯ぐきの腫れや出血に加え、歯が動く(動揺する)ようになり、歯を支える骨の吸収も中程度に進んでおり、噛む力に影響が出る場合もあります。
この段階では、歯周外科治療や専門的なクリーニングが必要となります。
また、治療後も、歯科医師や歯周病専門医による継続的なフォローアップが欠かせません。
歯周炎ステージⅣ(極重度歯周炎)
歯周炎の最終段階であり、歯周ポケットは6mm以上、骨や歯周組織の大部分が失われている状態です。
歯のぐらつきが強く、歯の喪失が起こる可能性が高い上、歯ぐきの炎症も強く、歯石や細菌が深い部分にまで蓄積しています。
治療には、歯周外科手術・補綴治療・場合によっては抜歯が必要となることもあります。
また、重度の歯周病は全身の健康にも影響を及ぼす可能性があり、糖尿病や心疾患との関連も指摘されているため、この段階では、専門的な治療と定期的な管理が不可欠です。
歯周病の治療方法
歯周病の治療は、進行の程度に関わらずまず「歯周基本治療」から始めることが基本です。
この段階でしっかり原因を取り除くことで、炎症を改善し、歯ぐきの健康を回復させることができます。
歯周基本治療
歯周基本治療では、主に次のような処置を行います。
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歯垢(プラーク・バイオフィルム)の除去
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正しい歯みがき方法の指導
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歯石の除去
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歯根面の滑沢化(表面をなめらかに)
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ぐらついた歯の噛み合わせ調整
これらを通じて、歯周病の原因となる細菌の温床を徹底的に取り除き、再発を防ぐ基盤を整えます。
スケーリング(Scaling)
スケーリングは、歯の表面や歯ぐきの中に付着した歯石・歯垢を専用の器具で取り除く処置です。
歯石やプラーク・バイオフィルムを除去することで、歯ぐきの炎症を抑え、健康な状態へと導きます。
スケーリングは歯周病治療の基本であり、最も重要なステップのひとつです。
歯周病の治療において、とても重要なプロセスです。

ルートプレーニング (Root Planing)
ルートプレーニングは、スケーリングで歯石を除去した後、歯根の表面をなめらかに整える処置です。
歯根表面を滑らかにすることで、
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細菌が再び付着しにくくなる
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歯ぐきが歯根に再付着しやすくなる
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歯周ポケットが浅くなり、再発を防ぎやすくなる
といった効果があります。
処置は通常、局所麻酔を用いて痛みの少ない状態で行われ、歯の状態によっては複数回に分けて行うこともあります。
歯周外科処置
歯周外科処置は、スケーリングやルートプレーニングなどの基本的な治療(非外科的治療)だけでは十分な改善が見られない場合に行う治療です。
進行した歯周病に対して、歯周組織の健康を回復し、歯を長く残すために外科的なアプローチを行います。
フラップ手術(FOP・歯肉剥離掻把術)
歯周ポケットが深く、通常のクリーニングでは歯石や感染組織を除去できない場合に行う治療です。
歯ぐきを一部開いて、歯根や歯槽骨の状態を直接確認しながら歯石や感染組織を徹底的に除去します。
治療後は歯ぐきを元に戻して縫合し、清潔な環境を整えることで炎症の改善と組織の再付着を促進します。
歯周組織再生療法
歯周組織再生療法は、歯周病によって失われた歯を支える組織(歯槽骨・歯周靱帯・セメント質など)を再生させる治療法です。
歯の安定性を高め、長期的な維持を目的として行われます。
再生療法には、以下のような方法があります。
歯肉移植術(結合組織移植術・CTG)
歯ぐきが下がって歯根が露出した部位に、上あごなどから健康な歯肉を採取して移植する治療です。
歯根を覆うことで、歯ぐきの後退を改善し、見た目や知覚過敏の症状を改善します。
