神経を抜いた歯が痛い理由と対処法を現役歯科医師が解説
- 山浦 泰明

- 6 日前
- 読了時間: 10分

「神経を抜いたのに、また歯が痛む」という経験をされて、戸惑っている方は少なくありません。
神経を取ればもう痛みとは無縁になる、というイメージをお持ちの方が多いためです。
しかし実際には、神経を抜いた歯でも痛みが出ることがあります。
治療の直後に一時的に出るものもあれば、しばらく経ってから出て、原因を調べる必要があるものもあります。
そして後者の中には、放置すると歯を失うことにつながるものも含まれます。
本記事では、神経を抜いた歯が痛む理由を治療直後と時間が経ってからに分けて整理し、自分でできる対処、やってはいけないこと、受診の目安、歯科で行う検査と治療まで、山梨県甲府市の山浦歯科医院の院長が現役の歯科医師の視点でわかりやすく解説します。
いま痛みでお困りの方も、これから根管治療を受ける方も、ぜひ最後までお読みください。
神経を抜いた歯が痛む理由
まず押さえておきたいのは、神経を抜いた歯でも痛みは起こりうるという事実です。
その理由は、痛みを感じている場所が歯の中だけではないためです。
いわゆる「神経を抜く」処置では、歯の内部にある歯髄(しずい)という、血管や神経を含む組織を取り除きます。
しかし、歯を支える歯根膜(しこんまく)、その下の骨(歯槽骨)や歯肉には、処置のあとも感覚が残っています。
歯の内部に神経がなくても、その周囲の組織が刺激を受けたり炎症を起こしたりすれば、痛みとして感じられます。
つまり「神経を抜いた歯の痛み」は、多くの場合、歯そのものではなく歯の周囲で起きていることを示すサインだと考えられます。
痛みの意味は、いつ痛むかによって大きく変わります。
治療直後から数日の痛み
結論から申し上げると、根管治療の直後に出る痛みの多くは一時的なもので、数日から1週間ほどで落ち着いていくことがほとんどです。
処置によって歯の周囲の組織が一時的に反応している状態で、体が治っていく過程で自然に和らいでいきます。
処置後の炎症による痛み
歯髄を取り除いたり、根の中を清掃したりする処置は、細い管の中で行う繊細な作業です。
その刺激で、根の先の周囲に一時的な炎症が起こり、噛んだときの痛みや、うずくような違和感が出ることがあります。
これは治癒の過程で見られる反応で、時間の経過とともに軽くなっていくのが一般的です。
当院でも、治療直後は一時的に痛みや違和感が残ることがあるものの、多くは数日から1週間程度で改善していくとご説明しています。
フレアアップと呼ばれる一時的な強い痛み
根管治療のあと、一時的に強い痛みや歯ぐきの腫れが出ることがあり、これはフレアアップと呼ばれます。
根の中の細菌や、処置で動いた組織が周囲を刺激し、体の免疫反応として炎症が強く出るために起こると考えられています。
研究では、根管治療後にフレアアップが起こる頻度はおよそ1割前後と報告されています。
痛みが強いと不安になりますが、多くは一時的なもので、適切な対応によって落ち着いていきます。
強い痛みや腫れが続く場合は、我慢せず、治療を受けた歯科医院にご相談ください。
時間が経ってからの痛み
治療から数か月、あるいは数年が経ってから痛みが出た場合は、治療直後の痛みとは意味が異なります。
こちらは自然に治ることが期待しにくく、原因を調べて対処する必要があるものが多く含まれます。
根の先の感染(根尖性歯周炎)
神経を抜いた歯の痛みで最も多い原因が、根の先に起こる感染です。
根の中に細菌が残っていたり、被せ物のすき間から新たに細菌が入り込んだりすると、根の先の周囲組織で炎症が起こります。
これを根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と呼び、進行すると根の先に膿がたまったり、歯を支える骨が溶けることもあります。
噛むと痛い、歯ぐきが腫れる、歯ぐきにニキビのようなできものができる、といった形で現れます。
日本の根管治療は再治療になる割合が高いことが指摘されており、研究によると保険診療の根管治療の成功率は3割から5割程度とされています。
再感染は、こうした再治療が必要になる状態の代表的なものです。
歯根の破折
神経を抜いた歯は、失活歯(しっかつし)と呼ばれ、栄養や水分を運ぶ歯髄を失うことで、天然の歯よりもろくなる傾向があります。
そこに噛む力や歯ぎしりの力が長年かかると、歯の根にひびが入ったり、割れたりすることがあります。
これを歯根破折(しこんはせつ)と呼びます。
割れたすき間から細菌が入ると、痛みや腫れ、歯ぐきからの排膿につながります。
研究によって幅はありますが、神経を抜いた歯の破折はおおむね数パーセントから2割程度の範囲で報告されており、決してまれとはいえません。
破折の程度によっては歯を残せないこともあり、早い段階での診断が大切になります。
被せ物や噛み合わせの問題
痛みの原因が、根の中ではなく被せ物や噛み合わせにあることもあります。
被せ物の高さが合っていないと、その歯にだけ強い力がかかり、噛んだときに痛みが出ます。
被せ物のすき間から細菌が入って再感染につながることもあります。
この場合は、噛み合わせの調整や再根管治療で改善が見込めることがあります。
痛む歯とは別の場所が原因のケース
「神経を抜いた歯が痛い」と感じていても、実際には隣の歯の虫歯や、歯周病による炎症が痛みのもとになっていることがあります。
神経のない歯自体は痛みを感じにくいため、周囲の別の原因による痛みを、その歯の痛みと取り違えてしまうことがあるためです。
原因を正しく見極めるには、痛む歯だけでなく口全体を診る必要があります。
夜間に強くなる痛みへの対処については、別の記事でも取り上げています。
痛いときの応急的な対処とやってはいけないこと
痛みが出たとき、受診までのあいだにご自身でできることがあります。
ただし、これらはあくまで一時的にしのぐための方法で、原因を取り除くものではない点にご注意ください。
受診までにできること
次のような対応で、痛みをやわらげられることがあります。
市販の鎮痛薬を、用法用量を守って使用する
頬の上から、冷たくしたタオルなどで軽く冷やす
痛む側で噛まないようにし、やわらかいものを選ぶ
患部を舌や指で触らないようにする
睡眠と休息をとり、体調を整える
これらで痛みが落ち着いても、原因がなくなったわけではありません。
一時的にやわらいだ場合でも、あらためて歯科を受診されることをおすすめします。
やってはいけないこと
一方で、次のような対応は状態を悪くすることがあるため、避けてください。
患部を強く冷やしすぎる、または温める
痛む部分を指や爪楊枝でつつく
腫れている部分を自分で潰そうとする
痛み止めだけで済ませ、受診を先延ばしにする
入浴や飲酒、激しい運動で血行を強く促す
血行が良くなると、炎症のある部分では痛みが強まることがあります。
そして最も避けたいのが、痛みが引いたからと放置してしまうことです。
神経を抜いた歯の痛みは自然に治りにくく、放っておくと感染が骨まで広がったり、歯を失うことにつながったりする場合があります。
受診の目安と歯科で行う検査・治療
痛みが続く、腫れや強い痛みがあるといった場合は、早めの受診が必要です。
歯科では、原因を特定したうえで状態に応じた治療を選びます。
受診を検討したいサイン
以下のような場合は、早めの受診をおすすめします。
治療から1週間以上経っても痛みが引かない、または強くなる
痛み止めが効かないほどの強い痛みがある
歯ぐきが腫れている、できものや膿がある
噛むと毎回痛む、歯が浮いたように感じる
顔が腫れる、熱が出るなど全身に症状が及んでいる
特に顔の腫れや発熱を伴う場合は、感染が広がっている可能性があり、早急な対応が必要です。
原因を特定するための検査
適切な治療のためには、まず痛みの原因を正しく突き止めることが欠かせません。
レントゲンだけでは、根の先の状態を把握しきれないことがあります。
当院では、歯科用CT(CBCT)で根や周囲の骨の状態を立体的に確認し、レントゲンでは平面的にしか映らない感染の範囲や根の形を細部まで診ています。
さらに、肉眼の約20倍まで拡大できるマイクロスコープ(手術用顕微鏡)を全症例で使用し、細菌感染の原因となる部位や微小な破折などを確認しています。
原因を正確につかむことが、その後の治療方針を左右します。
状態に応じた治療の選択肢
原因が分かったら、状態に応じて治療法を選びます。
主なものを整理すると、次のようになります。
原因 | 主な治療 |
根の先の再感染 | 再根管治療(リトリートメント)で古い詰め物を除去し、再度清掃・密封する |
通常の根管治療で治らない再感染 | 外科的歯内療法(歯根端切除術)で根の先を直接処置する |
被せ物や噛み合わせの問題 | 噛み合わせの調整、被せ物のやり直し |
歯根の破折 | 程度により保存を試みる、難しい場合は抜歯を検討する |
再根管治療では、被せ物や土台を外して根の中をやり直しますが、この際に歯を大きく削ると歯がさらにもろくなります。
当院ではマイクロスコープを用い、できるだけ歯を削らずに古い詰め物や土台を除去して再治療を行っています。
通常の再治療では改善しない場合でも、歯ぐきを小さく切開して根の先から処置する外科的歯内療法によって、抜歯を避けられることがあります。
精密根管治療の費用や、治療期間・回数・リスクについては、診査のうえで個別にご説明しています。
神経を抜いた歯を長持ちさせるために
痛みへの対処と同じくらい大切なのが、治療した歯をその後どう守っていくかです。
神経を抜いた歯はもろくなりやすく、被せ物での保護、力のコントロール、定期的な確認が歯を守る柱になります。
被せ物でしっかり保護する
根管治療のあとの歯は、被せ物で覆って力から守ることが破折の予防につながります。
治療が終わったあと、被せ物を入れずに放置すると、歯が割れるリスクが高まります。
根管治療を受けたら、最後の被せ物まで治療を完了させることが大切です。
歯ぎしり・食いしばりへの対策
歯ぎしりや食いしばりの癖があると、神経を抜いた歯にも大きな負担がかかり、破折の原因になります。
心当たりのある方は、就寝時に使うナイトガード(マウスピース)について歯科医師にご相談ください。
力のコントロールは、治療した歯を長持ちさせるうえで見落とされがちな要素です。
定期的なメンテナンス
神経を抜いた歯は、痛みなどの自覚症状が出にくいという特徴があります。
そのため、新たに虫歯ができてしまったり、根の先に再感染が起きても気づきにくく、症状が出たときには進行していることがあります。
定期的に受診して状態を確認することで、変化を早い段階で見つけられます。
当院では、治療後は3か月に1度のメインテナンスをおすすめし、噛み合わせや被せ物、周囲の状態を確認しています。
神経を抜いた歯の痛みでお悩みなら山梨県甲府市の「山浦歯科医院」
神経を抜いた歯でも、周囲の組織が刺激を受けたり感染を起こしたりすれば痛みは出ます。
治療直後の痛みは一時的なものが多い一方、時間が経ってからの痛みは、根の先の再感染や歯根の破折など、原因を調べて対処すべきものが多く含まれます。
痛み止めで一時的にやわらいでも、神経を抜いた歯の痛みは自然に治りにくいため、放置は避けたいところです。
山浦歯科医院では、歯科用CTとマイクロスコープを全症例で使用し、痛みの原因を立体的かつ拡大した視野で見極めたうえで、歯をできる限り残す方針で治療にあたっています。
院長は歯内療法の専門的な研鑽を積み、他院からの紹介患者、また他医院にて抜歯と診断された歯の相談から治療までも多数承っています。
他院で治療を受けた歯についてのセカンドオピニオンも受け付けておりますので、痛みが続く、腫れが引かないといった症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療については必ず歯科医師に相談し、適切な診断や治療を受けてください。





