夜に歯が痛くて眠れない・薬が効かない時の対処法を現役歯科医師が解説
- 山浦 泰明

- 6月15日
- 読了時間: 9分

「夜になると歯がズキズキして眠れない」、「痛み止めを飲んでも全然効かない……」そんな経験をされた方は少なくないはずです。
歯の痛みは突然やってきて、夜間に特に強くなるという特徴があります。
歯科医院が開いていない深夜や休日には、どう対処すればいいか途方に暮れてしまうこともあるでしょう。
本記事では、山梨県甲府市の山浦歯科医院の院長が、歯の痛みで眠れない原因・薬が効かない理由、そして今すぐ試せる応急処置と絶対に避けるべき行動について、わかりやすく解説します。
ただし、応急処置はあくまでも一時的なものになので、痛みが和らいでも、必ず歯科医院を受診して根本的な原因を取り除くことが大切です。
なぜ夜になると歯が痛くなるのか?
昼間は気にならなかったのに、夜になると突然歯がズキズキしてくるのは、私たちの体の仕組みが深く関わっています。
血流の増加が神経を圧迫する
日中は重力の影響で血液が下半身に流れやすい状態ですが、夜に横になると頭部への血流が増加します。
炎症が起きている歯や歯茎では、血液が集まることで血管が膨張し、その圧力が神経を圧迫して痛みが強くなります。
就寝前や夜中に痛みが増す最大の理由がこれです。
特に虫歯が歯の神経(歯髄)にまで達している場合は、血流の増加によって激しいズキズキとした痛みを感じやすくなります。
自律神経のバランスが変わる
私たちの体は、日中は「交感神経」、夜は「副交感神経」が優位に働きます。
副交感神経が優位になると、心身はリラックスしますが、同時に痛みに敏感になるという側面があります。
これにより、日中は感じられなかった痛みが夜間に強く表れることがあります。
また、入浴や飲酒も血行を促進するため、夜に痛みが増しやすい要因のひとつです。
薬が効かない原因は何?
市販の痛み止めを飲んでも歯の痛みがおさまらない場合、症状が重篤化しているサインかもしれません。
神経への炎症「歯髄炎(しずいえん)」
虫歯が進行して歯の内部にある神経(歯髄)にまで炎症が及んだ状態を「歯髄炎」といいます。
この状態になると、市販の鎮痛剤ではなかなか痛みをコントロールできなくなります。
ズキズキとした自発痛(何もしていないのに痛む状態)が特徴で、根管治療(歯の根っこの治療)が必要になるケースが多く、早めの受診が不可欠です。
根っこの先に膿がたまる「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」
歯髄炎がさらに進行して神経が死ぬと、歯の根の先端に炎症が起きて膿がたまります。
これを「根尖性歯周炎」と呼びます。膿が骨の中にこもった状態になると、圧力が非常に強くなり、鎮痛剤がほとんど効かないほどの激しい痛みが続くことがあります。
顎の骨や周囲の組織にまで影響が及ぶこともあるため、速やかな治療が必要です。
親知らずの炎症「智歯周囲炎(ちしししゅうえん)」
親知らず(智歯)が正しく生えてこられず、歯肉の下に埋まったままになっている場合、その周囲に細菌が侵入して炎症を起こすことがあります。
腫れや痛みを伴い、口が開きにくくなることもあります。
炎症が強い時期は、鎮痛剤の効果が限定的なこともあります。
歯の根のひび割れ「歯根破折(しこんはせつ)」
噛み合わせの力や歯ぎしり・食いしばりによって、歯の根にヒビが入ることがあります(歯根破折)。
ヒビの隙間から細菌が入り込んで炎症を起こすため、持続的な鈍痛や噛んだときの痛みが生じます。
この場合も鎮痛剤だけでは痛みをコントロールしにくく、歯科医院での診断が必要です。
虫歯以外が原因「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」
実は、歯以外の原因で歯が痛く感じることもあります。
代表的なものを以下にまとめます。
原因 | 特徴 |
副鼻腔炎(蓄膿症) | 上の奥歯全体が痛む。鼻づまりや頭重感を伴うことが多い |
歯ぎしり・食いしばり | 朝起きたときに痛みが強い。顎の筋肉の疲労感もある |
三叉神経痛 | 電気が走るような鋭い痛みが突然起こる |
心疾患(狭心症など) | 左の下あごや歯に痛みが放散することがある |
これらは歯科治療だけでは改善しないため、症状が長引く場合は専門医への相談が重要です。
特に胸の痛みを伴う場合は、すみやかに内科や救急を受診してください。
今すぐ試せる歯が痛くて眠れない時の応急処置
以下の対処法はあくまでも「歯科医院を受診するまでの一時的な応急処置」です。
痛みが和らいだとしても、必ず歯科医院を受診してください。
市販の痛み止めを服用する
最も即効性が期待できる方法は、市販の鎮痛剤を服用することです。
ロキソプロフェン(ロキソニンSなど)やイブプロフェン(イブなど)、アセトアミノフェン(タイレノールなど)が代表的な成分です。
パッケージに「歯痛」への効果が記載されているものを選びましょう。
服用後、効果が出るまで30分〜1時間程度かかるため、就寝1時間前に飲んでおくとスムーズに眠れることがあります。
注意点:
必ず用法・用量を守って服用する
アルコールとの併用は避ける
過剰摂取は副作用や健康被害のリスクを高める
胃腸が弱い方はアセトアミノフェン系が比較的胃への負担が少ない
患部を頬の外側から冷やす
炎症が起きている部位を冷やすと、血流が穏やかになり一時的に痛みが和らぐことがあります。
濡れたタオルや保冷剤をタオルで包んで、痛む側の頬に当てましょう。
冷やす目安は10〜15分程度です。
長時間連続して冷やすのは避け、インターバルを置いて繰り返しましょう。
注意:直接、氷や氷水を口に含むのはNGです。
強すぎる刺激でかえって痛みが増すことがあります。
また、知覚過敏や歯周病が原因の場合、冷やすことで逆効果になる場合もあります。
口の中を清潔にする(歯磨き・うがい)
食べかすや汚れが虫歯の穴に詰まっていると、細菌が活発になり痛みが強まることがあります。
ぬるま湯で優しくうがいをし、刺激しないように歯を磨いてみましょう。
歯間ブラシやデンタルフロスで詰まったものを取り除くだけで痛みが軽減するケースもあります。
やってはいけない痛みを悪化させるNG行動
応急処置の方法と同じくらい重要なのが、「やってはいけないこと」を知ることです。
間違った行動は痛みを悪化させ、翌日の治療を困難にする可能性があります。
患部を温める・入浴でゆっくり温まる
温めると血行が促進されて血管が拡張し、神経への圧力が高まり、痛みが悪化します。
炎症がある状態での入浴も同様です。痛みが強い日は長風呂は避け、ぬるめのシャワーで済ませましょう。
飲酒する
アルコールは一時的に気分を紛らわせるように感じますが、血行を促進して炎症を悪化させます。
鎮痛剤と組み合わせると副作用のリスクも高まります。
歯が痛い時の飲酒は厳禁です。
鎮痛剤を用法・用量以上に飲む
「もっと飲めば効くかも」と考えて過剰摂取するのは危険です。
胃腸障害や肝機能への影響など、深刻な副作用を引き起こす可能性があります。規定量を守り、効果がない場合は歯科医院を受診してください。
患部を強く触る・つまようじで刺激する
炎症が起きている部分を強く刺激すると、痛みが増したり細菌が広がったりするリスクがあります。
虫歯の穴を指や舌でくりかえし触るのもやめましょう。
すぐに受診が必要なサイン
以下の症状がある場合は、応急処置にとどまらず、できるだけ早急に歯科医院か救急外来を受診してください。
痛み止めがまったく効かないほどの激痛が続く
顔や首、顎が腫れている・腫れが広がっている
口が開けにくくなっている・飲み込みが困難
発熱を伴っている
胸の痛みや動悸を伴う
顔の腫れや発熱、飲み込みの困難は、感染が顎の骨や周囲の組織、さらには全身へ広がっている可能性を示すサインです。
このような状態は「口腔底蜂窩織炎(こうくうていほうかしきえん)」など生命に関わる状態に発展することもあり、
夜間・休日であっても救急外来を受診することをお勧めします。
夜間や休日の対応については、お住まいの地域の休日急患センターや、自治体が運営する「救急安心センター(#7119)」に電話で相談することができます。
応急処置の後は必ず歯科医院へ
応急処置によって痛みが和らいでも、歯の内部の炎症や虫歯が治ったわけではありません。
「朝になったら痛みが引いた」という場合でも、放置すると以下のリスクが高まります。
虫歯・炎症のさらなる進行
歯の神経を失うリスク
顎の骨への感染(顎骨炎)
最終的な抜歯が必要になる可能性
特に歯髄炎や根尖性歯周炎は不可逆的に進行することが多く、早期に治療を受けることで歯を残せる可能性が高まります。
「痛みがなくなったから大丈夫」と自己判断せず、翌日中には歯科医院を受診しましょう。
歯の痛みを予防するために日頃からできること
「そもそも急な歯の痛みを起こさないために」という観点で、日頃のケアを見直すことも大切です。
毎食後の歯磨きを徹底する
デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
定期的に歯科検診を受ける
歯ぎしり・食いしばりを放置しない
甘い食べ物・飲み物の過剰摂取を控える
歯の痛みは、虫歯や歯周病が進行したサインであることがほとんどです。
定期検診で早期発見・早期治療を行うことが、痛みのない毎日を守る最善の方法です。
歯の痛み治療なら山梨県甲府市の「山浦歯科医院」
歯が痛くて眠れない時、まずは本記事でご紹介した応急処置を試してみてください。
ただし、これらはあくまでも一時しのぎで、歯の痛みを我慢し続けることは、症状の悪化につながります。
根本的な解決には、歯科医師による正確な診断と適切な治療が欠かせません。
山梨県甲府市の山浦歯科医院では、虫歯・歯周病・根管治療・親知らずの抜歯など、幅広い歯科診療に対応しています。
「ちょっと気になる程度」のうちから受診いただくことで、大きな治療を回避できることも多くありますので、「急に歯が痛くなった」「痛み止めが効かない」という方も、お気軽にご相談ください。
患者様お一人おひとりの状態をしっかりと診査・診断したうえで、痛みの原因を取り除くための最善の治療をご提案します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療については必ず歯科医師に相談し、適切な診断や治療を受けてください。
参考文献


