インプラントが失敗したらどうする?やり直しは可能?現役歯科医師が解説

更新日:8月26日

「入れたインプラントがぐらついている気がする」「腫れが引かない」というご相談を、他院で治療を受けられた方からいただくことが多数あります。
高額な費用と時間をかけた治療だけに、うまくいかなかったときの落胆は大きいものです。
一方で、インプラントが脱落してしまった場合「もう一度治療するのは無理だろう」と思い込んで、そのままにしてしまう方も少なくありません。
実際には、状態によって再度インプラントをやり直せるケースは多くあります。
ただし、すぐに埋め直せる場合と、骨の回復を待ってからになる場合、条件を整えないと再治療に進めない場合があり、この見極めが結果を大きく左右します。
本記事では、インプラントの失敗と呼ばれる状態の中身から、やり直しができるケースとできないケースの判断材料、再治療の流れと期間、費用の考え方、同じ失敗を繰り返さないための確認点まで、山梨県甲府市の山浦歯科医院の院長が現役の歯科医師の視点でわかりやすく解説します。
現在お困りの方も、これから治療を検討される方も、ぜひ最後までお読みください。
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インプラント治療における「失敗」の中身
ひとくちに失敗といっても、起きていることは同じではありません。
大きく分けると、骨と結合しない早期のもの、結合した後に失われる後期のもの、インプラント本体ではなく上の部品のトラブルの3つです。
骨と結合しない早期の失敗
埋入したインプラント体が顎の骨と結びつかず、被せ物を装着する前に脱落したり、動揺が出たりする状態です。
インプラントは、チタン製の人工歯根が骨と一体化する「オッセオインテグレーション(骨結合)」によって支えられています。
この結合が最初から得られないものを早期失敗と呼び、埋入からおおむね3〜6ヶ月以内、被せ物で噛み始める前に判明することがほとんどです。
原因としては、骨の量や質の不足、埋入時の熱や過剰な力、術中の細菌汚染、喫煙、コントロールされていない全身疾患などが挙げられています。
早期の脱落の場合は骨の損傷が小さく済むことが多い状態でもあります。
結合した後に起こる後期の失敗
一度は問題なく使えていたインプラントが、数年経ってからぐらつく、痛む、抜け落ちるという状態です。
最も多い背景がインプラント周囲炎で、これはインプラントの周りの歯ぐきと骨に細菌感染による炎症が起こり、支えている骨が失われていくものです。
天然の歯における歯周病に相当するものと考えるとイメージしやすいでしょう。
やっかいなのは、天然の歯の歯周病よりも自覚症状が出にくく、気づいたときには骨の吸収が進んでいる場合が多い点です。
このほか、噛み合わせの負担が一部のインプラントに集中している場合や、歯ぎしり・食いしばりの力が長期間かかり続けた場合にも、後期の失敗につながることがあります。
なお、早期・後期のいずれについても、報告されている発生頻度はインプラント1本あたり数パーセント程度とする研究があります。
決して多数派ではありませんが、ゼロではないという前提で治療を考える必要があります。
インプラント本体ではなく被せ物のトラブル
被せ物が欠けた、外れた、ネジがゆるんだ、という状態は、多くの方が「失敗した」と感じる一方で、比較的多くみられるトラブルです。インプラント体そのものは骨としっかり結合しているため大きな問題とならないケースがほとんどです。
この場合は、埋まっている部分を触らずに、上の部品の修理や作り直しだけで対応できることがあります。
体への負担も費用も、埋め直しに比べればはるかに小さく済みます。
まずはレントゲンや歯科用CTで、インプラント体が骨と結合しているかどうかを確認することが出発点になります。
やり直しができるケースとできないケース
結論から申し上げると、インプラントのやり直しは多くの場合に可能です。
ただし「今すぐ埋め直せる」ケースと、「条件を整えてから」になるケース、そして「別の治療法をおすすめする」ケースに分かれます。
やり直しの可否を分ける5つの判断材料
診査で確認しているのは、主に以下の5点です。
判断材料 | 見ていること | やり直しに向く状態 |
トラブルの部位 | インプラント体か、上の部品か | 上の部品のみであれば修理・再製作で対応できることがある |
骨の量と質 | 撤去後に残る骨の高さと幅 | 十分な骨が残っている、または骨造成で補える |
感染の程度 | インプラント周囲炎の進行度、周囲の歯への波及 | 炎症が限局していて、清掃と処置でコントロールできる |
全身の状態 | 糖尿病などの血糖コントロール、服薬状況 | 主治医と連携して管理できている |
生活習慣 | 喫煙、歯ぎしり、通院とセルフケアの継続 | 改善に取り組める、対策を受け入れられる |
これらは「1つでも当てはまれば不可」というものではなく、組み合わせで判断します。
たとえば骨が足りない場合でも、骨造成によって再治療に進める方は多くいらっしゃいます。
一方、喫煙や血糖コントロールの問題を残したまま埋め直すと、同じ結果を繰り返す可能性が高くなります。
比較的やり直しやすいケース
以下のような状態であれば、比較的スムーズに再治療へ進めることが多いといえます。
被せ物やネジのみのトラブルで、インプラント体は骨と結合している
早期に脱落し、周囲の骨の吸収が大きくない
インプラント周囲炎が1本に限局していて、周囲の歯に及んでいない
全身状態が安定していて、通院を継続できる
このうち被せ物やネジのトラブルは、そもそも「やり直し」ではなく部品交換の範囲で終わることもあります。
早めに受診されるほど、この範囲で収まる可能性が高くなります。
条件を整えてからになるケース
すぐには埋め直せないものの、準備を経て再治療に進めるケースです。
骨の吸収が進んでいて、そのままでは埋入する土台が足りない
残っている天然の歯に歯周病がある、また残っているインプラントがインプラント周囲炎になっているなど口全体の細菌のコントロールができておらず環境が整っていない
喫煙習慣があり、禁煙に取り組む必要がある
このタイプで多いのが、骨造成を挟むパターンです。
骨の再生には数ヶ月単位の時間がかかるため、治療全体の期間は長くなりますが、土台となる骨を作り直したうえで埋入できます。
歯周病が関係している場合は、歯周病治療を先行させ、口全体の炎症を抑えてからインプラントに進みます。
遠回りに見えても、この順序を守ることが結果的に近道になります。
やり直しをすすめられないケース
次のような状況では、インプラントにこだわらず、ブリッジや入れ歯を含めて検討したほうがよい場合があります。
骨造成を行っても十分な骨量が見込めない部位である
血糖コントロールが不良な糖尿病など、外科処置のリスクが高い全身状態
骨の代謝に影響する薬剤を使用中で、主治医から外科処置を控えるよう指示がある
同じ部位で複数回の失敗を繰り返している
定期的な通院やセルフケアを続けることが難しい事情がある
いずれも「一生できない」という意味ではなく、時期や条件が変われば選択肢に戻ることもあります。
大切なのは、インプラント以外の方法も含めて比較したうえで納得して選ぶことです。
やり直したインプラントの生存率
再治療を検討するうえで知っておいていただきたいのが、埋め直したインプラントの成績は、最初の埋入に比べるとやや下がる傾向があるという点です。
一度失敗が起きた部位は、骨の状態や治癒のしかたに何らかの不利な条件を抱えていることがあるためと考えられています。
複数の研究をまとめた報告では、1回目のやり直しでは1年時点でおおむね9割以上が機能している一方、同じ部位で2回目のやり直しになると、その割合は下がると示されています。
この数字は悲観するためのものではなく、「やり直しは1回目が最も条件がよい」ことを意味します。
だからこそ、なぜ失敗したのかという原因を特定しないまま埋め直すことは避けるべきだと考えています。
インプラントのやり直しの流れと期間
再治療は、現状の把握、除去、治癒、再埋入という順に進みます。
実際の期間は骨の状態や処置の内容によって変わるため、あくまで目安としてご覧ください。
ステップ1 診査
最初に行うのは、埋め直しの計画ではなく、現在どのようになっているのかを調べることです。
レントゲンと歯科用CTで骨の残り方とインプラント体の位置を立体的に確認し、歯ぐきの炎症の程度、噛み合わせ、周囲の歯の状態を含めて診査します。
歯科用CTを用いると、骨の厚みや神経・上顎洞との位置関係を三次元で把握でき、より的確な方針を立てられます。
前の医院での治療内容が分かる資料があれば、あわせてご持参ください。
ステップ2 インプラント体の除去
インプラント体が骨と結合していない、または周囲炎で支えを失っている場合は、除去を行います。
現在は、周囲の骨をできるだけ削らずに取り出す専用の器具が用いられており、以前より骨の損失を抑えやすくなっています。
除去そのものは1回の処置で終わることが多く、局所麻酔下で行います。
なお、感染が強い場合は、除去とあわせて不良な組織の清掃を行います。
ステップ3 治癒期間と骨造成
除去した部位の傷が治り、骨が落ち着くまでの期間を置きます。
骨の欠損が大きい場合は、この段階でGBR(骨誘導再生法)などの骨造成を行い、失われた骨の幅や高さを補います。
骨造成では、骨補填材を置いた上を膜で覆い、骨が再生する空間を確保します。
再生には数ヶ月を要し、条件が合えば骨造成と再埋入を同時に行える場合もあります。
どちらを選ぶかは、骨の状態によって決まります。
ステップ4 再埋入と被せ物の製作
骨の状態が整ったら、あらためてインプラント体を埋入します。
CTのデータ上で埋入位置と角度をあらかじめシミュレーションしてから手術に臨む方法(ガイデッドサージェリー)もあり、埋入位置の精度を高められます。
埋入後は骨と結合するまでの治癒期間を置き、その後に型取りを行って被せ物を装着します。
装着後も、噛み合わせの調整と経過の確認のために来院いただきます。
工程ごとの期間の目安は次のとおりです。
工程 | 期間の目安 |
診査・診断・治療計画 | 1~2回の来院 |
インプラント体の除去 | 1回の処置 |
除去後の治癒 | 3~4ヶ月程度 |
骨造成(必要な場合) | 骨の再生に数ヶ月(半年以上待つことも) |
再埋入から被せ物の装着まで | 3〜4ヶ月程度 |
全ての治療期間を合わせると、骨造成を伴わない場合は半年前後、伴う場合は1年近くを見込んでいただくことになります。
期間が長く感じられるかもしれませんが、それぞれの工程は骨が治るのを待つ時間であり、短縮を優先すると再び同じ結果を招きかねません。
やり直しにかかる費用の考え方
インプラント治療および再治療は、いずれも自由診療(保険適用外)です。
やり直しの費用は一律ではなく、必要な処置の組み合わせによって変わります。
費用が分かれる3つの工程
費用は、大きく次の3つに分かれます。
工程 | 費用が発生する条件 |
インプラント体の除去 | 埋まっている本体を取り出す必要がある場合 |
骨造成 | 除去後の骨が不足していて、補う必要がある場合 |
再埋入と被せ物 | あらためてインプラントを入れる場合 |
つまり、被せ物やネジのみの問題であれば3つ目の一部で済み、周囲炎で骨を大きく失っている場合は3つすべてが必要になります。
同じ「やり直し」でも金額の幅が大きいのは、この構造によるものです。
当院の費用は診療費用のページに掲載していますので、あわせてご確認ください。
診査のうえで、必要な処置と総額をお見積りとしてご説明してから治療に入ります。
なお、インプラント治療にかかった費用は、条件を満たせば医療費控除の対象となります。
治療期間・回数
再治療全体では、除去から被せ物の装着まで半年から1年程度が目安です。
通院回数は、診査・除去・骨造成・埋入・二次手術・型取り・装着・調整を含め、複数回にわたります。
骨造成を伴う場合は、治癒を待つ期間があるため治療期間も長くなります。
リスク・副作用
外科処置に伴い、術後の腫れ、痛み、内出血が生じることがあります。
まれに、周囲の神経や血管への影響、上顎洞への影響が生じる可能性があります。
また、再埋入したインプラント体が骨と十分に結合しない場合や、経過中にインプラント周囲炎を発症した場合には、追加の処置や再度の撤去が必要となることがあります。
喫煙習慣、コントロール不良の糖尿病は、これらのリスクを高める要因です。
保証制度が使えるケース
治療を受けた医院に保証制度があり、条件を満たしていれば、再治療の費用の一部が保証の対象になることがあります。
まずは治療を受けた医院に、保証の有無と適用条件をご確認ください。
保証書が手元にある場合は、相談の際にお持ちいただくと判断がしやすくなります。
当院にも保証制度がありますが、対象は当院で行った治療に限られます。(外部保険機関で保険に加入されている場合は当院でも適応となる場合もありますのでその場合はご相談ください)
基本的に他院で受けられた治療の再治療については、当院の保証の対象外となる点をご了承ください。
同じ失敗を繰り返さないために確認したいこと
再治療で最も避けたいのは、原因が残ったまま埋め直して、同じ経過をたどることです。
医院を選び直すとき、また現在の担当医と相談を続けるときに、確認しておきたい点を挙げます。
診断に何を使っているか
骨の量と質、神経や上顎洞との位置関係は、平面のレントゲンだけでは正確に把握できません。
歯科用CTによる三次元的な診査が行われているかどうかは、確認しておきたい点です。
当院では、初診時の検査で口全体の状態を確認し、痛みが出ている部分だけでなく、噛み合わせや他の歯を含めて診ています。
インプラントの失敗が、実は別の歯の問題や噛み合わせの偏りに由来していることもあるためです。
埋入位置をどう決めているか
インプラントは、骨があるところに入れればよいというものではなく、最終的な被せ物の形と噛み合わせから逆算して位置を決める必要があります。
位置や角度が合っていないと、清掃しにくい形になったり、特定の方向に力が集中したりします。
当院ではシンプラントによる3Dシミュレーションで、埋入位置と角度をあらかじめ計画しています。
前回の治療でどのような計画が立てられていたのかを聞いておくと、原因の手がかりになることがあります。
治療後のメンテナンス体制
インプラント周囲炎は自覚症状が乏しいため、症状が出てからの受診では手遅れになりやすい病気です。
そのため、治療後にどのような間隔で、何を確認してもらえるのかは重要な確認事項になります。
治療後は3ヶ月に1度を目安にメインテナンスを受け、歯ぐきの状態、噛み合わせ、ネジのゆるみ、清掃状態を確認してもらうことが望まれます。
セカンドオピニオンを受けるときの持ち物
他院での治療について相談される際、次のものがあると診断の精度が上がります。
治療前後のレントゲン画像やCTデータ(借りられる場合)
治療計画書、見積書
使用したインプラントのメーカーと種類が分かる書類やカード
保証書
服用中のお薬手帳
特にメーカーが分かると、部品の交換だけで対応できるかどうかの判断がしやすくなります。
インプラントはメーカーごとに規格が異なり、部品に互換性がないためです。
※お手元に資料が何もない場合でも、現在の状態を診査したうえでご説明できますので、ご相談ください。
インプラントのやり直しなら山梨県甲府市の「山浦歯科医院」
インプラントの失敗と呼ばれる状態には、骨と結合しない早期のもの、結合後に失われる後期のもの、被せ物など上の部品のトラブルがあり、それぞれ対応が異なります。
やり直しができるかどうかは、トラブルの部位、骨の量と質、感染の程度、全身の状態、生活習慣の組み合わせで判断します。
骨が足りない場合でも骨造成によって再治療に進める方は多く、「もう無理だろう」と自己判断される必要はありません。
一方で、原因を特定しないまま埋め直すと同じ経過をたどりやすく、やり直しは1回目が最も条件のよい機会でもあります。
山浦歯科医院では、高解像度の歯科用CTによる三次元的な診査と、シンプラントを用いた埋入位置のシミュレーションをもとに治療計画を立てています。
治療後は手術用顕微鏡を使ったメンテナンスで、長期的な経過を確認しています。
また、他院で治療を受けられた方のご相談やセカンドオピニオンも承っておりますので、現在お困りの症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療については必ず歯科医師に相談し、適切な診断や治療を受けてください。
参考文献






