歯石除去はなぜ何回も通う?1回でまとめてできない理由を現役歯科医師が解説
- 山浦 泰明

- 2月24日
- 読了時間: 11分

「歯石を取りに行ったら、また次回も来てくださいと言われた」
「1回で全部終わらせてほしいのに、なぜ何回も通わなければいけないの?」
そんな疑問を持たれる患者様は少なくありません。
実は、歯石除去に複数回の通院が必要になるのには、きちんとした理由があり、保険診療のルールや、患者様の歯と歯茎を守るための医学的な配慮など、様々な要因が関係しているのです。
この記事では、山梨県甲府市の山浦歯科医院の院長が、現役歯科医師の視点から、歯石除去になぜ複数回の通院が必要なのか、その理由を詳しく解説していきます。
通院回数を減らすためのポイントや、1回で終わらせる方法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
歯石除去が何回も必要な理由
歯石除去が1回で終わらないことには、いくつかの重要な理由があります。
「お金儲けのために回数を増やしているのでは?」と疑問に思われる方もいらっしゃいますが、決してそのようなことはありません。
保険診療では、歯石除去は1本いくらと決まっており、時間や回数をかけても歯科医院の収入が増えるわけではないのです。
ここでは、複数回の通院が必要になる具体的な理由について説明します。
保険診療のルールによる制約
保険診療で歯石除去を行う場合、厚生労働省が定めた治療の手順に従う必要があります。これは全国どの歯科医院でも同じルールです。
保険適用で歯石除去を受けるためには、まず歯周病の検査を行い、診断に基づいて治療計画を立てる必要があります。
また、1回の治療で処置できる歯の本数や部位にも制限があるため、結果として複数回の通院が必要になるのです。
具体的には、スケーリング(歯肉縁上の歯石除去)は上下で分けて行い、SRP(歯肉縁下の歯石除去)は最低でも上下左右の4ブロックから6ブロックに分けて実施することが原則となっています。
これは、適切な治療を行うための医療制度上のルールであり、患者様の安全を守るための仕組みでもあります。
歯石の量と蓄積期間
長期間歯科医院に通院していなかった場合、お口の中に大量の歯石が蓄積していることがあります。
1年以上歯石除去を受けていない方の場合、一度に全ての歯石を取り除くことは物理的に困難です。
歯石は、目に見える歯の表面だけでなく、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の深い部分にも付着します。
表面的にはそれほど汚れていないように見えても、レントゲン検査を行うと歯根にたくさんの歯石が付着していることも珍しくありません。
定期的にメンテナンスを受けている方であれば、歯石の量も少なく1回で終わることもあります。
しかし、何年も歯科医院に行っていなかった方の場合は、複数回の通院が必要になることもあります。
歯茎への負担を軽減するため
一度に大量の歯石を除去すると、歯茎や歯に大きな負担がかかってしまいます。
特に、歯茎の炎症が強い状態で広範囲の歯石を一気に取り除くと、術後に痛みや出血などの症状が強く出やすいこともあります。
数回に分けて歯石を除去することで、患者様の負担を抑えることができます。
また、回数を分けることで、歯茎の改善状態を確認しながら治療を進めることができ、より安全で確実な治療が可能になります。
歯ブラシがうまくできていないことが原因の場合も多く、まずは歯磨き指導を行い、ある程度健康な歯茎の状態に戻してから歯石除去を始めることもあります。
これは、汚れが多い状態で歯石を取っても、治療効果が十分に得られないためです。
段階的な治療が必要
歯周病治療には、世界的に認められた適切な手順やガイドラインがあります。
正しい歯周病治療を行うためには、段階を踏んで治療を進めていく必要があります。
まず初診時にレントゲン撮影や歯周ポケット検査を行い、歯周組織の破壊の程度(骨がどの程度溶けているかなど)、歯石がどこに付着しているかなどを診査・診断します。
その後、ブラッシングの状態を確認し、歯石の量や歯肉の回復状況を見ながら、適切な期間・回数をかけて歯石を除去していきます。
歯磨き指導も重要な治療の一つです。
半年に一度歯科医院で歯石を取っても、毎日のブラッシングが不十分では歯石はすぐにたまってしまい、歯周病は進行してしまいます。
歯石の種類と除去の難易度
歯石には大きく分けて2種類あり、それぞれ除去の難易度が異なります。
この違いも、通院回数に影響する重要な要素です。
歯肉縁上歯石とは
歯茎を境に歯の歯冠側に付着している歯石を「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」といいます。
これは唾液に含まれるカルシウム成分などにより、歯垢(プラーク)が石灰化したものです。
色は白色から薄黄色で、入れ歯や被せ物にも付着します。比較的付着力が弱いため、歯科専用のスケーラーで除去しやすい歯石です。
下の前歯の裏側や上の奥歯の外側など、唾液腺の近くに特に付着しやすい傾向があります。
これらの部位を重点的にケアすることが、歯石予防には効果的です。
歯肉縁下歯石の特徴
歯茎の中の歯根面に付着する歯石を「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」といいます。
歯と歯茎の間にある溝(歯肉溝)からしみ出てくる滲出液や血液、歯垢が結びつくことで石灰化します。
色は茶色から黒っぽい色をしており、歯肉縁上歯石よりも硬く強固に付着しています。
目に見えにくい位置にあるため治療の難易度も高く、歯石除去の際には痛みを伴いやすいのが特徴です。
歯肉縁下歯石は、1回の治療で4~6本ずつ処置を行うことが一般的です。
全ての歯に歯肉縁下歯石が付着している場合、6回程度の通院が必要になることもあります。
歯肉縁下に深く入り込んだ歯石を除去するには、SRP(スケーリング・ルートプレーニング)という専門的な処置が必要です。
場合によっては、歯茎を切開して歯石を除去するフラップ手術が必要になることもあります。
歯石除去の一般的な治療の流れ
保険診療で歯石除去を行う場合、以下のような流れで治療が進められます。
基本的には4~6回程度の通院が標準的です。
初診時の検査(1回目)
まず、お口のレントゲン(X線)撮影を行い、歯の周りの骨(歯槽骨)が下がってきていないかなど、骨の状態を確認します。
次に、歯周ポケット検査を実施します。
歯と歯茎の間の溝の深さを測定することで、歯周病の進行度を評価できます。
健康な歯茎であれば1~3mm程度ですが、歯周病が進行すると4mm以上になることもあります。
この検査結果をもとに、どの程度の歯石が付着しているか、どのような治療計画が必要かを診断します。
また、現在のブラッシング状態も確認し、必要に応じて歯磨き指導を行います。
初診時の費用は、3割負担の方で検査代を含めて3,000円から4,000円程度が一般的です。
スケーリング(2~3回目)
初診時の検査で歯周病と診断された場合、まず歯肉縁上歯石の除去(スケーリング)を行います。
超音波スケーラーという専用の器具を使用し、超音波の振動で歯石を除去していきます。
保険診療のルールでは、スケーリングは上顎と下顎を分けて行うことが原則です。
歯石の量が多い場合は、さらに細かくブロック分けして処置を行うこともあります。
処置時間は1回30分で、2回目以降の費用は1回につき2,500円程度ですが、施術する歯の本数や部位によって費用が異なります。
再評価検査(4回目)
スケーリングが終了した後、数週間の期間を置いて再度歯周ポケット検査を行います。
これは、歯石除去によって歯茎がどの程度改善したかを確認するための重要な検査です。
この検査で歯茎の状態が良好になっていれば、定期メンテナンスに移行できますが、歯周ポケットが深いまま改善していない場合は、歯肉縁下歯石の除去(SRP)が必要と判断されます。
SRP(5~6回目以降)
歯肉縁下に歯石が残っている場合、特殊な器具を使用して、歯茎の中の歯石を丁寧に除去していきます。
これがSRP(スケーリング・ルートプレーニング)です。
SRPは歯肉縁上の歯石除去よりも高度な技術が必要で、痛みを伴うこともあるため、必要に応じて麻酔を使用します。
通常、右上、左上、右下、左下の4ブロックから6ブロックに分けて処置を行います。
全ての処置が終了した後、再度評価検査を行い、治療効果を確認します。
歯石がまだ残っている場合や、歯周病が重度の場合は、さらに追加の処置が必要になることもあります。
回数が増える具体的なケース
歯石除去の回数は、お口の状態によって大きく異なります。
ここでは、特に回数が多くなりやすいケースについて説明します。
長期間通院していなかった場合
1年以上歯科医院に通院していなかった方の場合、お口の中の広範囲に歯石が付着している可能性が高くなります。
この場合、歯石を取る範囲が広いと、一度に取り除くことが困難です。
また、長期間放置された歯石は硬く強固に付着しているため、専用の器具を使い分けて丁寧に除去する必要があり、状態によっては、通常よりも多くの回数が必要になることがあります。
実際に、何年も歯科医院に行っていなかった方の口腔内を診察すると、大量の歯石が沈着していることが多く見られます。
表面の汚れがそれほど目立っていなくても、レントゲンを撮ると歯根に大量の歯石が付着していることも珍しくありません。
歯周病が進行している場合
歯周病が進行すると、歯肉縁下の深い部分にまで歯石が入り込んでおり除去が困難になります。歯周ポケットが深く、歯周病が中度から重度に進行している場合は通院回数が増える傾向があります。
中等度の歯周病の場合、3~4ヶ月に1回の歯石除去が推奨されます。
歯周病の進行度合いが高くなると、歯石が取り除きにくくなります。
また、歯茎の炎症が強い場合、まず炎症を抑える処置が優先されることもあります。
出血や腫れが強い状態で歯石除去を行うと、術後の痛みや不快感が強くなるだけでなく、治療効果も十分に得られないためです。
重度の歯周病で、歯茎を切開して歯石を除去する歯周外科手術が必要になる場合もあります。
このようなケースでは、さらに治療回数が増加します。
定期的なクリーニングをおすすめします
自費診療で行う歯のクリーニングは、主にPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)という施術になります。
専用の器具とフッ化物入り研磨剤を使用して歯石を除去し、歯面清掃も同時に行います。
費用は歯科医院によって異なりますが、一般的に5,000円から20,000円程度です。
30分で5,000円、60分で8,000円など、時間で料金を設定している医院が多い傾向があります。
定期メンテナンスを継続している場合
最も理想的な方法は、定期的にメンテナンスに通い、歯石がたまる前にクリーニングを受けることです。
3ヶ月に1回程度の頻度で定期検診を受けている方であれば、歯石の量も少なく、1回の通院で処置が完了することがほとんどです。
定期的にメンテナンスを受けていると、歯周病もほとんどない状態を維持でき、1回のスケーリングで終わることも珍しくありません。
また、定期検診では虫歯や歯周病の早期発見もできるため、大がかりな治療が必要になることも防げるため、結果的に、通院の負担も費用も最小限に抑えることができます。
通院回数を減らすためのポイント
歯石除去の通院回数を減らすためには、日頃のケアと定期的なメンテナンスが重要です。
ここでは、具体的なポイントをご紹介します。
定期的なメンテナンスが最も効果的
一度きちんとお口の中の歯石をすべて取り除いた後は、3ヶ月に一度程度のクリーニングで、回数や時間をかけずにきれいな状態を維持できます。
歯石取りの理想的な頻度は3ヶ月に1回程度です。
ただし、歯石のできやすさには個人差があり、唾液の性質や分泌量、歯並びの状態なども影響します。
若くてもプラークコントロールが良くない場合は、2ヶ月や1ヶ月に1回と、頻度を上げた方が良いでしょう。
50代以上になると歯周病の影響が現れやすくなるため、最低でも3ヶ月に1度、場合によっては1~2ヶ月に1度程度の通院が推奨されます。
定期的なメンテナンスを受けることで、初診時のような長時間の治療や複数回の通院が不要になり、年間合計4時間程度の時間的負担で、お口の健康を維持できます。
正しい歯磨き習慣を身につける
歯石は歯垢が石灰化したものなので、歯石ができる前に歯垢をしっかり除去することが重要です。
食後24時間以内にプラークが形成され、約2日で歯石になり始めます。
毎日の歯磨きで磨き残しを減らすことが、歯石予防の基本です。
ただし、歯磨きだけでは全てのプラークを取り除くことはできません。
歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃用具を併用することで、より効果的にプラークを除去できます。
また、歯科衛生士による歯磨き指導を受けることも重要です。
一人ひとりの磨き方には癖があり、「よく磨けているところ」と「磨き残しがあるところ」という傾向が現れます。
この傾向を正してもらうことで、磨き残しをしにくい歯磨き方法を身につけることができます。
歯石が特につきやすい下の前歯の裏側や上の奥歯の外側を、特に丁寧に磨くことを心がけましょう。
歯石除去なら山梨県甲府市の「山浦歯科医院」
歯石除去に何回も通う必要があるのは、保険診療のルール、歯石の量や付着状況、患者様の負担軽減など、様々な理由があります。
決してお金儲けのために回数を増やしているわけではなく、適切な歯周病治療を行うための必要な手順なのです。
通院回数を減らすためには、一度しっかりと歯石を除去した後、3ヶ月に1回程度の定期メンテナンスを継続すること、そして毎日の正しい歯磨き習慣を身につけることも重要です。
山浦歯科医院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた適切な歯周病治療とメンテナンスを行っています。
歯石除去や定期検診について、ご不明な点やご心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献
厚生労働省「医療広告ガイドライン」
日本歯周病学会「歯周病の診断と治療のガイドライン」




