歯の根っこに膿がたまる原因とよくある症状・治療法を現役歯科医師が解説
- 山浦 泰明

- 6月8日
- 読了時間: 10分

「歯茎が腫れてズキズキする」、「噛むたびに痛みがある」、「歯茎に白いプクッとしたできものができた」
こうした症状を感じたとき、もしかすると歯の根っこの先に膿がたまっているサインかもしれません。
歯の根っこへの膿のたまりは、ある日突然激しい痛みとして現れることもあれば、自覚症状がほとんどないままひそかに進行していることもあるやっかいなトラブルです。
多くの方が「痛みがないからまだ大丈夫」と放置してしまいがちですが、そのまま進行すると顎の骨が溶けたり、最終的に歯を失うリスクが高まったりします。
本記事では、山梨県甲府市の山浦歯科医院の院長が、歯の根っこに膿がたまる原因や、よくある症状、治療法、放置した場合のリスク、受診前の応急処置などについてお伝えします。
心当たりのある症状がある方は、ぜひ最後までお読みください。
歯の根っこに膿がたまるとはどういう状態?
歯の内部には、神経や血管が通っている「歯髄(しずい)」と呼ばれる柔らかい組織があります。
虫歯が進行したり、外傷によって歯が割れたりすると、細菌が歯の中へ侵入し、この歯髄が死んでしまいます。
死んでしまった組織は体の中で腐敗し、さらに細菌が繁殖します。
その細菌が歯の根っこの先(根尖)の組織まで広がると、体の防御反応として白血球が集まり、細菌と戦った結果として骨の中に膿が生じます。
この状態を「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」と呼びます。
歯の周りの骨(歯槽骨)を溶かしながら膿がたまるため、レントゲン写真を撮ると根っこの先に黒い影として映ることが多く、歯科医師が異変を発見する重要な手がかりになります。
膿は自然には消えないため、早期に適切な治療を受けることが大切です。
歯の根っこに膿がたまる主な原因
歯の根っこに膿がたまる原因はひとつではありません。
重度の虫歯(歯髄の壊死)
歯の根っこに膿がたまる原因として最も多いのが、虫歯の放置です。
虫歯は初期段階では痛みを感じないことが多く、気づかないうちにじわじわと進行します。
やがて歯の神経まで細菌が達すると激しい痛みを感じますが、さらに放置すると神経そのものが死んでしまい、一時的に痛みが治まります。
「痛みがなくなった=治った」と誤解される方が少なくありませんが、これは神経が壊死した状態です。壊死した組織に細菌が繁殖し続け、根っこの先まで感染が広がると、骨を溶かしながら膿の袋を形成します。
この状態が慢性化したものを「歯根嚢胞(しこんのうほう)」といいます。
過去の根の治療(根管治療)が不十分だった場合
以前に根っこの治療(根管治療)を受けた歯に膿がたまることもあります。
歯の根っこは非常に細く複雑な形状をしており、枝分かれしていたり曲がりくねっていたりします。
どれだけ丁寧に治療を行っても、わずかな細菌が根の中に残ってしまうことがあり、時間の経過とともにそれが繁殖して再び膿を生じさせることがあるのです。
以前に治療した歯が再び痛み始めたり、歯茎が腫れたりした場合には、根の中に細菌が残っている可能性があります。
「治療済みの歯だから安心」と油断せず、定期検診を欠かさないことが大切です。
歯の破折(歯根が割れた・ひびが入った)
歯の根っこが折れたり割れたりすること(歯根破折)も、膿がたまる原因のひとつです。
スポーツ中の衝突、硬いものを噛んだ衝撃、歯ぎしりの習慣、交通事故などがきっかけになります。
また、根管治療を行った歯はもともとの強度が落ちているため、わずかな力でも折れやすい傾向があります。
割れた部分から細菌が侵入し、根の周囲に炎症が広がって膿の形成につながります。
歯の根っこに膿がたまったときのよくある症状
膿がたまっている状態では、さまざまな症状が現れることがあります。
ただし、「慢性期」の根尖性歯周炎は自覚症状がほとんどないこともあり、免疫力が下がったときや疲れがたまったときにはじめて症状が表面に出てくることも多いです。
以下に代表的な症状をまとめました。
症状 | 特徴・解説 |
|---|---|
噛んだときの痛みや違和感 | 歯の根の周りにある歯根膜に炎症が起こり、食事のたびに痛みや浮いた感じが生じる |
歯茎の腫れ | 膿の袋が大きくなることで歯茎が腫れ上がり、赤みや熱感を伴うことも |
白いできもの(サイナストラクト・フィステル) | 膿の出口として歯茎にニキビ状の白いふくらみができる。痛みはあまりない |
歯が浮いたように感じる | 根尖の炎症が歯根膜を圧迫し、歯が浮いている感覚が出る |
強い口臭 | 膿そのものや細菌が分解したタンパク質が原因で、不快な臭いが発生する |
頭痛・顔面の痛み | 上の歯に膿がたまると副鼻腔炎を引き起こし、頭痛や顔面痛の原因となることがある |
発熱・だるさ | 感染が広範囲に及んだ場合、全身症状として発熱や倦怠感が現れることもある |
これらの症状が複数重なって現れている場合は、すでに膿がかなりたまっている可能性があります。
自己判断で様子を見るのではなく、早めに歯科医院を受診するようにしましょう。
放置するとどうなる?膿を放っておくリスク
「痛みがそれほどないから」「忙しくて歯科に行く時間がない」と放置していると、状況は徐々に悪化します。
以下に、放置した場合に起こりうる主なリスクを解説します。
顎の骨が溶けていく
膿がたまり続けると、周辺の骨(歯槽骨)が溶けていきます。
骨が失われると、歯を支えることができなくなり、歯のぐらつきにつながります。
さらに進行すると骨髄炎(骨の炎症)を引き起こすリスクもあり、特に下顎の場合は重篤化しやすいとされています。
全身への影響
また、口の中の細菌が血流に乗って体内に広がることで、心臓や血管への悪影響を及ぼすリスクも指摘されています。
上の歯の根元に膿がたまる場合は、副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こすこともあり、耳鼻科で治療を受けても改善しないケースがあります。
歯の問題が思わぬ全身症状につながることを覚えておいてください。
最終的には抜歯になる可能性も
骨が大きく失われたり、歯根の破折が深刻だったりした場合、歯を残すことが難しくなり、抜歯の選択を迫られることがあります。
天然の歯は一度失うと元に戻ることはありません。
膿がたまっているサインを見逃さず、できるだけ早期に受診することが歯を守るための最善策です。
歯の根っこの膿を解消する治療法
膿がたまってしまったときは状態や原因に応じて、いくつかの治療法が選択されます。
根管治療(再根管治療を含む)
膿がたまった根っこを治療する中心的な方法が「根管治療」です。
細菌に感染した歯髄や壊死した神経を取り除き、根管の内部を丁寧に清掃・消毒したうえで薬剤を詰めて密封する処置です。
以前に根管治療を受けた歯に再び膿がたまった場合は「再根管治療(リトリートメント)」を行います。
古い薬や詰め物を取り除いて内部を再度清掃しますが、初回より難易度が高くなる傾向があります。
歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)
根管治療を繰り返しても改善が見られない場合、または根っこの先に形成された膿の袋(歯根嚢胞)が大きい場合には、外科的な処置として「歯根端切除術」が検討されます。
歯茎を切開して直接根っこの先を少し切除し、膿の袋ごと取り除く方法です。局所麻酔をして行うため、術中の痛みはほとんどありません。
術後1〜2週間ほどで回復することが多いですが、術後の腫れや違和感が生じることがあります。
根管治療だけでは対応が難しいケースでも、この処置によって歯を保存できる可能性があります。
膿の切開排膿(応急処置)
急性症状として膿がたまって強く腫れている場合、まず膿を外に出す「切開排膿(せっかいはいのう)」が行われることがあります。
歯茎を少し切って膿を排出させる応急処置で、これにより炎症組織内部の圧が下がり痛みが和らぎます。
根本的な治療ではなく、腫れや痛みが強い時の応急処置として行われることがあります。
抗菌薬(抗生物質)の投与
腫れが大きい場合など感染による炎症が広がっている場合には、抗菌薬が処方されることがあります。
ただし、抗菌薬はあくまで補助的な役割であり、根本の感染源を取り除かない限り、薬だけで完治することはありません。
服用により一時的に炎症が治まっても、必ず歯科的な根本治療を受けることが必要です。
抜歯
上記のいずれの治療を行っても改善が見込めない場合、または歯の破折や骨の喪失が深刻な場合には、やむを得ず抜歯を選択することがあります。
抜歯後は入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの補綴治療(ほてつちりょう)が選択肢となりますが、自分の歯を残すことが最善です。
そのためにも早期診断・早期治療が重要なのです。
受診前にできる応急処置と日常での注意点
急に痛みや腫れが起きた際は、以下の点を参考に、悪化を防ぎながら早めの受診につなげてください。
ただし、これらはあくまで一時的な対処法で、自然に治ることは期待できないため、少しでも早く歯科医院を受診することをおすすめします。
痛み止めを服用する
市販の鎮痛剤は痛みを一時的に和らげる効果があります。
あくまで応急処置として活用し、根本治療は必ず歯科医院で行ってください。
患部を冷やす
腫れて熱をもっている場合は、濡れたタオルなどで患部の外側をそっと冷やすと楽になることがあります。
ただし冷やしすぎには注意が必要です。
患部を直接触らない
手や舌で触れることで細菌が広がり、症状が悪化する可能性があります。
入浴・運動・飲酒を避ける
体温が上がると血流が促進されて痛みや腫れが増すことがあります。
急性症状がある期間はなるべく安静にしましょう。
根っこの膿を予防するために大切なこと
膿がたまる状態を防ぐためには、日ごろの予防が欠かせません。
以下は根っこの膿を予防する代表的な予防方法です。
虫歯の早期治療
虫歯は小さなうちに治療することで、神経まで感染が及ぶリスクを大幅に減らすことができます。
定期検診の受診
症状がない段階でも定期的にレントゲンを撮影することで、初期段階の異変を発見しやすくなります。
正しいブラッシング
毎食後の歯磨きに加え、歯と歯の間の清掃(フロス・歯間ブラシ)も習慣化することで、虫歯・歯周病のリスクを下げられます。
治療済みの歯のケアを怠らない
根管治療を受けた歯は神経がないため痛みを感じにくく、再発に気づきにくい特徴があります。
定期検診で状態を確認してもらいましょう。
マウスガードの活用
スポーツをする方や歯ぎしりの習慣がある方は、マウスガードで歯への衝撃を緩和することが破折の予防につながります。
根管治療・歯の根っこの膿なら山梨県甲府市の「山浦歯科医院」
膿がたまる状態は、多くの場合、長い時間をかけて進行します。
山梨県甲府市の山浦歯科医院では、歯の根っこに膿がたまった状態(根尖性歯周炎・歯根嚢胞)に対して、患者さまの歯をできるだけ残すことを第一に考えた診療を行っています。
「噛むと違和感がある」「歯茎が繰り返し腫れる」「以前に根の治療をした歯が再び気になる」など、気になる症状がある方はどうかお気軽にご相談ください。
歯の根っこのトラブルは、早期に発見・治療するほど回復の可能性が高まりますので、甲府市周辺にお住まいの方で、根管治療や歯根の膿についてお悩みの方は、ぜひ一度山浦歯科医院へお越しください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療については必ず歯科医師に相談し、適切な診断や治療を受けてください。

