インプラントがグラグラする・取れた場合の原因と対処法を現役の歯科医師が解説
- 山浦 泰明

- 5月25日
- 読了時間: 12分

「治療を終えたはずのインプラントが、最近少し揺れている気がする」「食事中にインプラントが取れてしまい、どうすればよいかわからない」
こうした不安を抱えて検索されている方も多いのではないでしょうか。
本来、インプラントは顎の骨としっかり結合しているため、グラグラ揺れたり取れたりすることはありません。
インプラント周囲に違和感が生じている場合、何らかのトラブルが起きているサインと考えられます。
放置していると症状が悪化し、最終的にはインプラントを撤去せざるを得ないケースもあるため、早めの対応が肝心です。
本記事では、インプラントがグラグラする・取れる原因と正しい対処法、そして再発を防ぐためのポイントについて、わかりやすく解説していきます。
インプラントがグラグラする・取れるのは異常なサイン
インプラントは「オッセオインテグレーション」と呼ばれる現象で、人工歯根(インプラント体)が顎の骨と強固に結合する仕組みになっています。
天然の歯にあるような歯根膜が存在しないため、本来であれば揺れることはありません。
にもかかわらずグラつきや脱落が起きているなら、構造の一部に不具合が生じているか、周囲の組織にトラブルが発生していると考えられます。
ここでは、インプラントの基本構造を確認したうえで、揺れや脱落が示すサインについて整理していきましょう。
インプラントは3つのパーツで構成されている
インプラントは、見た目には1本の歯のようでも、内部は次の3つのパーツに分かれています。
インプラント体(人工歯根):顎の骨に埋め込まれる土台部分。チタン製で、骨と結合する役割を担う
アバットメント(連結部分):インプラント体と人工歯をつなぐ中間パーツ。多くはネジで固定される
上部構造(人工歯):表面に見える被せ物。セラミックやジルコニアなどの素材が使われる
どのパーツに不具合が出ているかによって、症状の重さも対処法も大きく変わってきます。
たとえば人工歯だけがグラついている場合と、インプラント体ごと揺れている場合では、緊急度がまったく異なるため、まずは落ち着いて状態を確認することが大切です。
「揺れ」や「違和感」は放置せず早期受診
軽い揺れや違和感を「そのうち治まるだろう」と放置してしまう方は少なくありませんが、インプラントのトラブルが自然に治ることはまずありません。
むしろ時間が経つほど周囲の組織にダメージが広がり、修復が難しくなる傾向があります。
特にインプラント体ごとグラついている場合、すでに顎の骨が炎症で溶け始めている可能性も考えられます。
少しでも違和感があれば、できるだけ早めにインプラント治療を受けた歯科医院へ相談しましょう。
インプラントがグラグラする主な原因
インプラントの揺れには、いくつかの典型的な原因があります。
原因によって対処の方向性がまったく異なるため、まずは「何が起きているのか」を理解することが第一歩となります。
ここでは、臨床現場でよくみられる代表的な原因を順に解説していきます。
①アバットメント(連結部分)のネジの緩み
最も多く見られるのが、インプラント体と人工歯をつなぐアバットメントのネジが緩んでしまうケースです。
アバットメントはネジで固定されているため、長期間使ううちに金属疲労が起こったり、強い噛みしめで力が加わり続けたりすると、徐々にネジが緩んでくることがあります。
この場合、インプラント体そのものは骨にしっかり固定されたままなので、揺れているように感じるのは上部構造の部分だけです。
比較的早期に発見できれば、歯科医師がネジを締め直すだけで改善することも多く、深刻なトラブルには発展しにくい状態といえます。
とはいえ自己判断は危険なため、必ず歯科医院での確認が必要となります。
②人工歯(上部構造)の接着剤の劣化や破損
人工歯とアバットメントの固定方法には、ネジで留める「スクリュー式」と、専用の接着剤で固定する「セメント合着」の2種類があります。
セメント合着の場合、長年の使用で接着剤が劣化し、人工歯が浮いたりグラついたりすることがあります。
また、人工歯そのものが欠けたり割れたりすることでも揺れを感じるケースがあるでしょう。
素材によって耐久性は異なり、安価で消耗の早い素材を選ぶと、インプラント本体にも余分な負担がかかってしまうことが知られています。
被せ物を選ぶ際は見た目だけでなく耐久性にも目を向けることが、長期的なトラブル予防につながります。
③インプラント周囲炎
インプラント周囲炎とは、インプラントの周りに細菌が繁殖して炎症が起こる状態を指します。
初期は「インプラント周囲粘膜炎」と呼ばれ、歯ぐきの腫れや出血が主な症状ですが、進行すると周囲の骨が溶け始め、土台ごとグラついて最終的に脱落することもあります。
インプラントは天然の歯のような神経がないため、痛みを感じにくく、自覚症状が出にくいのが厄介な点です。気づいたときには骨吸収が進んでいた、というケースも珍しくありません。
日々の歯みがきや歯科医院での定期メンテナンスを怠らないことが、何よりの予防策となります。
④噛み合わせの不調・歯ぎしり・食いしばり
噛み合わせのバランスが崩れていたり、就寝中の歯ぎしりや日中の食いしばりがあったりすると、インプラントに過剰な力が集中してかかります。
インプラントには天然歯にあるような衝撃を吸収する歯根膜がないため、強い力をそのまま受け止めてしまうのです。
この負担が積み重なると、ネジの緩みや上部構造の破損、さらにはインプラント体周囲の骨にダメージが及ぶ可能性もあるでしょう。
歯ぎしりの自覚がある方や、朝起きたときに顎が疲れている方は、ナイトガード(マウスピース)の使用について歯科医師に相談されることをおすすめします。
⑤骨との結合が不十分(オッセオインテグレーションの失敗)
インプラント手術後、数か月以内にグラつきが現れた場合は、インプラント体が顎の骨としっかり結合できていない可能性が考えられます。
骨の量や質が十分でなかった、術後の安静が守られなかった、喫煙によって血流が悪化したなど、いくつかの要因が関係していることが多いでしょう。
このケースでは残念ながら一度インプラントを撤去し、骨の状態を整えてから再治療を検討する流れとなります。
骨が不足している場合は、骨を増やす処置を組み合わせることもあります。
再発を防ぐためにも、原因をしっかり特定したうえで治療計画を立て直すことが重要です。
インプラントがグラグラする・取れたときの正しい対処法
実際にトラブルが起きてしまったら、まずは慌てず冷静に対応することが何より大切です。
誤った自己対処はかえって状況を悪化させ、治療費や治療期間が増えてしまう原因にもなります。
ここからは、状態別の正しい対処法を順を追って解説していきます。
グラグラしているときにやるべきこと・避けるべきこと
揺れに気づいた段階で取るべき行動と、絶対に避けるべき行動は次のとおりです。
行動 | やるべきこと | 避けるべきこと |
|---|---|---|
連絡 | 早めに歯科医院へ電話で相談 | 「そのうち治る」と放置 |
患部への対応 | 患部に触れず安静を保つ | 指や舌で繰り返し触る |
食事 | 反対側で噛み、軟らかいものを選ぶ | 硬い食べ物を患部側で噛む |
清潔の保持 | やさしい歯みがきで清潔に | 患部に強く歯ブラシを当てる |
喫煙 | 受診までは控える | 普段通り喫煙を続ける |
特に大切なのは「自分で何とかしようとしない」という姿勢です。
市販の接着剤で固定する、強引にネジを締めようとするなどの行為は、細菌感染や破損のリスクを高めてしまいます。
冷静に対応し、専門家の判断を仰ぎましょう。
インプラントが取れてしまったときの応急処置
人工歯やアバットメント、あるいはインプラント体そのものが取れてしまった場合は、以下の手順で応急処置を行ってください。
取れたパーツを確認する:どの部分が外れたかを把握する
流水で軽くすすぐ:強くこすったり消毒液に浸けたりしない
清潔な容器に保管する:透明なプラスチックケースやジッパー付き保存袋が適している
歯科医院へ連絡する:いつ・どんな状況で取れたかを伝える
受診まで患部に負担をかけない:硬いものを避け、安静に保つ
取れたパーツは状態によっては再利用できる場合もあるため、捨ててしまわないよう注意が必要です。
また、口腔内に元に戻そうとすると誤って飲み込んでしまったり、細菌が入り込んで炎症を起こしたりする恐れもあります。
必ず歯科医院に持参して、歯科医師に対応を任せましょう。
受診時に伝えるとスムーズな情報
歯科医院に連絡・受診する際は、次のような情報を整理しておくと診断がスムーズに進みます。
いつ取れた・揺れ始めたか(具体的な日時)
どのような状況だったか(食事中、就寝中、特にきっかけなし、など)
痛みや腫れ、出血の有無
取れたパーツの有無と状態
普段の生活習慣(喫煙・歯ぎしりの自覚など)
これらの情報は、原因の特定や治療方針の決定において非常に重要な手がかりとなりますので、電話で連絡する前にメモにまとめておくと、緊張していても伝え忘れを防げるはずです。
歯科医院で行われる治療内容
歯科医院では、まずレントゲンやCTで状態を詳しく確認したうえで、原因に応じた治療を行います。
状況によって対応はさまざまですが、ここでは代表的な治療内容を整理しておきましょう。
原因別の主な治療法
原因 | 主な治療内容 |
|---|---|
アバットメントのネジの緩み | 人工歯を外してネジを締め直す・噛み合わせを調整する |
人工歯の接着剤の劣化 | 専用接着剤で再装着、または新しい人工歯を作製する |
インプラント周囲炎 | クリーニング・歯石除去・抗菌処置、進行例では外科処置 |
噛み合わせ・歯ぎしり | 噛み合わせの調整・ナイトガードの作製 |
骨との結合不良 | インプラント体の撤去、骨の状態を整えてから再手術を検討 |
軽度のネジの緩みや接着剤の劣化であれば、その日のうちに処置が完了することもあります。
一方、インプラント周囲炎が進行している場合や骨吸収が著しい場合は、撤去や再治療など長期的な計画が必要になることもあるでしょう。
再手術が必要になるケースについて
骨吸収が進行している、インプラント体そのものが破折している、周囲の組織が大きく損傷しているといった場合は、一度インプラントを撤去する判断が必要です。
撤去後は骨の回復を数か月待ち、必要に応じて骨を増やす処置を行ったうえで、再度埋入手術を検討します。
再手術ではブリッジや入れ歯といった他の選択肢も比較検討するのが一般的です。
患者さま一人ひとりの口腔内の状態や生活習慣に合わせて、最適な方法を歯科医師と相談しながら決めていく流れとなります。
インプラントのトラブルを予防するために大切なこと
トラブルが起きてから対処するよりも、起きないように日頃から備えておくことの方がはるかに大切です。
インプラントを長く快適に使い続けるために、ご自身でできる予防策と歯科医院でできるサポートを確認していきましょう。
毎日のセルフケア
インプラント周囲炎の最大の原因は、日々のプラーク(歯垢)の蓄積です。
歯ブラシでの丁寧なブラッシングに加え、デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどを併用して、歯と歯ぐきの境目までしっかり清掃しましょう。
歯科医院での定期的なメンテナンス
セルフケアだけでは落としきれない汚れや、ご自身では気づきにくい変化を発見できるのが、歯科医院での定期メンテナンスです。
3〜6か月に一度を目安に、噛み合わせのチェック、専門的なクリーニング、レントゲンによる骨の状態確認などを受けることが推奨されています。
定期検診は、トラブルの早期発見・早期治療につながるだけでなく、インプラントの保証を維持する条件として設定されている歯科医院も少なくありません。
「特に困っていないから」と受診を後回しにせず、習慣として通院することが長持ちの秘訣です。
生活習慣を見直す
喫煙はインプラントの大敵といわれています。
タバコに含まれる成分が血流を悪化させ、歯ぐきや骨への免疫機能を妨げるため、インプラント周囲炎のリスクが高まることが知られています。
可能であれば禁煙、難しい場合でも本数を減らす工夫が望まれるでしょう。
また、糖尿病などの全身疾患がある方は、血糖コントロールがインプラントの予後にも影響します。
歯科医院だけでなく、かかりつけの内科医とも連携しながら全身の健康管理に取り組むことが、結果的にインプラントを守ることにつながります。
信頼できる歯科医院を選ぶ
そもそもインプラントトラブルの予防は、最初の治療計画と手術の精度に大きく左右されます。
CTによる精密な診断、清潔な手術環境、十分な説明とカウンセリング、術後のメンテナンス体制が整っているかどうかは、歯科医院選びの重要なポイントです。
複数の歯科医院でカウンセリングを受けて比較検討し、納得できる説明をしてくれる歯科医師のもとで治療を受けることが、トラブルを未然に防ぐ第一歩となります。
インプラント治療なら山梨県甲府市の「山浦歯科医院」
インプラントのグラつきや脱落は、決して珍しいトラブルではないものの、適切な対処と日頃のケアによって多くは予防可能です。
違和感を覚えた段階ですぐに歯科医院へ相談すれば、軽い処置で済むケースも多いため、「少し変だな」と感じた時点での早めの受診を心がけましょう。
山梨県甲府市の山浦歯科医院では、インプラント治療における精密な診査・診断はもちろん、治療後の長期メンテナンスにも力を入れて取り組んでいます。
他院で治療されたインプラントのトラブルについても、まずは状態を丁寧に確認したうえで、患者さま一人ひとりに合った対応をご提案いたしますので、インプラントの揺れや違和感、取れてしまったときの不安など、どうぞお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療については必ず歯科医師に相談し、適切な診断や治療を受けてください。


