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インプラントの年齢制限はある?高齢者が治療を受ける時のリスク・デメリットを現役歯科医師が解説

  • 執筆者の写真: 山浦 泰明
    山浦 泰明
  • 2025年11月22日
  • 読了時間: 14分

「80歳を過ぎていますが、インプラントはできますか?」

「入れ歯が合わなくて食事が苦痛です。でも、今更手術なんて……と家族に反対されています」


実際の診療室でも、こうした切実なご相談をいただく機会が非常に増えています。


人生100年時代と言われる今、80代、90代になっても「自分の歯で噛みたい」「美味しい食事を楽しみたい」と願うのは当然のことです。


しかし、インターネットで検索すると「高齢者のインプラントは危険」「やめたほうがいい」といったネガティブな情報も散見され、何を信じればいいのか迷われている方も多いのではないでしょうか。


本記事では、インプラント治療の年齢制限の有無や、高齢者が治療を受ける際に知っておくべきリスクとデメリットについて、山梨県甲府市でインプラント治療を中心に実施している山浦歯科医院の院長が、現役歯科医師の視点から詳しく解説します。



インプラント治療に年齢制限はあるの?

年齢による制限はない

歯科インプラント治療において、「○○歳以上は手術を行ってはならない」という医学的なガイドラインや法的制限は存在しません。


実際に、80代や90代の患者様であっても、インプラント手術によって咀嚼機能(噛む力)を回復させるケースは、現代の歯科医療においては珍しいことではなくなっています。


加齢そのものがインプラントと骨の結合(オッセオインテグレーション)を阻害する直接的な要因ではないことが、近年の研究でも明らかになっています。


重視されるのは健康状態

治療の可否を判断する上で、歯科医師が最も重要視するのは、カレンダー上の年齢ではなく、「身体機能としての年齢(生理学的年齢)」です。


具体的には、以下の要素が総合的に評価されます。


  • 日常動作の自立度: 通院や身の回りのことが自身で行えるか。

  • 免疫・治癒能力: 傷の治癒に必要な代謝機能が保たれているか。

  • 認知機能: 治療の必要性を理解し、術後の管理を行える判断能力があるか。


たとえ60代であっても全身状態が悪ければ治療が見送られる場合もありますし、逆に90代であっても全身疾患のコントロールが良好であれば、安全に治療を行うことが可能です。


つまり、インプラント治療の適応は「年齢」ではなく「個々の健康状態」によって決定されるのが一般的です。


高齢者がインプラント治療を受けるリスク

高齢の患者様がインプラントを検討する際、必ず知っておいていただきたいリスクがいくつかあります。


骨密度の低下とインプラントの定着

年齢を重ねると骨密度が低下し、インプラントが定着しにくくなることがあります。


インプラントは顎の骨と結合することで安定するため、骨密度の低下は治療の成功に大きく影響します。


高齢者に多い骨に関する問題として、以下が挙げられます。


  • 加齢による自然な骨密度の低下

  • 骨粗鬆症による骨の脆弱化

  • 歯周病による顎骨の吸収

  • 長期間歯がない状態が続いたことによる骨の減少


骨密度が不足している場合、骨を増やす「骨造成(GBR)」や「サイナスリフト」などの処置が必要になることもあります。


これらの処置を行うことで、骨密度が不足している方でもインプラント治療が可能になる場合がありますが、追加の処置は治療期間の延長や費用の増加につながるため、事前の精密な診断が重要です。


骨の状態は個人差が大きく、同じ年齢でも骨密度が十分に保たれている方もいれば、かなり減少している方もいらっしゃいます。


免疫力の低下と感染リスク

高齢になって免疫力が低下すると、顎の骨を削った後の傷口の治りが遅くなり、インプラント体と骨がしっかりと結合できない可能性があるほか、傷口からの細菌感染のリスクも高まります。


感染リスクを高める要因は以下の通りです。


  • 加齢による自然な免疫機能の低下

  • 糖尿病などの基礎疾患による感染抵抗力の低下

  • 口腔内の衛生状態の維持が難しくなる

  • 唾液分泌量の減少による自浄作用の低下


感染が起きてしまうと、インプラント周囲炎を引き起こし、最悪の場合はインプラントの撤去が必要になることもあります。


そのため、治療前後の徹底した感染管理と日々の口腔ケアが不可欠で、手術前には口腔内を清潔な状態にしておくこと、手術後は指示された通りに消毒や投薬を続けることが重要になります。


インプラント周囲炎は自然に治る?原因・治療法・重度の症例について現役の歯科医師が解説
www.yamaura-dc.jp
インプラント周囲炎は自然に治る?原因・治療法・重度の症例について現役の歯科医師が解説
インプラント治療を受けた後、ある日突然、歯茎が腫れたり、痛みを感じて不安に思った経験はありませんか?それはもしかすると「インプラント周囲炎」かもしれません。インプラント周囲炎は、インプラント周囲の組織に炎症が生じる疾患で、放置すると症状が進行し、最悪の場合、インプラントの脱落につながることもあります。この記事では、山梨県甲府市の山浦歯科医院の院長が、現役歯科医師の立場からインプラント周囲炎になってしまう原因から、インプラント周囲炎の治療法、重度の症例などについて詳しく解説します。また、動画で内容や山浦歯科医院での施術結果を確認したい方は以下をご確認ください。【インプラントがダメになる!】インプラント周囲炎ー原因と治療で健康を取り戻す~山梨県甲府市山浦歯科医院~インプラント周囲炎の症状インプラント周囲炎(peri-implantitis)は、細菌感染症の一種で、歯科インプラント周囲の組織に炎症が発生し、特に骨の喪失(骨吸収)が伴う状態のことを指します。簡単に言えば、インプラント版の歯周病です。症状は初期段階から重度のケースで様々ありますが、進行度別に以下のような症状が現れます。いずれにし


全身疾患による治療制限

高齢者の場合、糖尿病や心疾患、骨粗鬆症などの全身疾患を抱えているケースが多く、これらの疾患はインプラントの成功率や治癒速度に影響を与える可能性があります。


特に注意が必要な疾患と影響は以下の通りです。

疾患名

影響

糖尿病

傷の治りが遅く、感染リスクが高まる。血糖値のコントロールが不十分な場合は治療が難しい

高血圧

局所麻酔薬に制限があり、手術中の血圧管理が必要

骨粗鬆症

特定の治療薬(ビスホスホネート製剤)を服用している場合、顎骨壊死のリスクがある

心臓病

外科手術による身体的負担が大きく、リスクが高まる


これらの疾患がある方は、内科医との連携のもと、治療の可否を慎重に判断する必要があります。


服用している薬の影響

高齢者は多くの場合、複数の薬剤を服用しており、特に骨粗鬆症の治療に使われるビスフォスフォネート系薬剤は、顎骨壊死を引き起こすリスクがあります。


インプラント治療に影響する主な薬剤として、以下があります。


  • 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬):出血が止まりにくくなる

  • ビスホスホネート製剤:顎骨壊死のリスクがある

  • ステロイド薬:創傷治癒を遅らせる可能性がある

  • 免疫抑制剤:感染リスクが高まる


複数の薬を服用している場合は、服薬手帳を持参して、歯科医師に詳しく伝えることが大切です。


体力的な負担と手術のリスク

インプラントの手術は医科の手術と比べるとかなり軽い部類に入りますが、体力のない高齢の方にとってはそれなりにきついものとなります。


手術による体力的な負担として、以下が考えられます。


  • 手術時間中(通常1~2時間)、同じ姿勢を保つことへの負担

  • 局所麻酔による身体への影響

  • 手術後の痛みや腫れによる精神的・身体的ストレス

  • 回復期間中の食事制限による栄養摂取の難しさ


患者さんの全身的な健康状態や手術に対する耐性を評価し、必要であれば局所麻酔に加えて静脈内鎮静法(セデーション)と呼ばれる点滴麻酔を行ったり、手術の方法を調整します。


このように、高齢者の身体的負担を軽減する方法もありますので、不安な点は事前に歯科医師に相談しましょう。


高齢者がインプラント治療を受ける際のデメリット

高齢の患者様がインプラント治療を受ける際のデメリットは以下の通りです。


メンテナンスの難しさ

老後は通院が困難となり、定期的な歯科医院への受診が困難になる場合があります。


インプラントは治療が終わったら終わりではなく、一般的に3~6ヶ月に1回の定期的なメンテナンスが必要ですが、高齢者の場合、以下の理由でメンテナンスが難しいことが多いです。


  • 足腰が弱くなり通院が難しくなる

  • 車の運転ができなくなり交通手段が限られる

  • 認知症の初期症状により予定を忘れてしまう

  • 手の器用さや視力の低下により日常的な口腔ケアが難しくなる


メンテナンス不足はインプラント周囲炎などのトラブルにつながり、最悪の場合はインプラントの除去が必要になることもあります。


これを防ぐためには、訪問診療を行っている歯科医院を選ぶことや、家族のサポート体制を整えておくことが重要です。


現在は元気に通院できていても、将来的なことも考えて、通いやすい立地の歯科医院を選ぶことをお勧めします。


また、治療を受ける段階から、家族にインプラントの存在やメンテナンスの必要性を伝えておくことも大切です。


介護が必要になった場合の問題

介護が必要になった場合に、現在通院している歯科に通院できなくなる可能性があり、また高齢者のインプラント周囲炎の原因として多いのが日々のクリーニング不足です。


家庭で介護を受ける場合、老々介護となることも多く、インプラントの衛生管理まで手が回らないことがあります。


施設で介護を受ける場合は、介護施設の職員がインプラント管理の知識を持っていない場合があることや、訪問歯科医院がインプラントの除去に対応していない場合があること、専用の器具が必要なため緊急時の対応が難しいことなどが問題となります。


このような状況を避けるためには、治療を受ける段階から、将来的な介護の可能性も視野に入れて計画を立てることが重要です。


認知症発症後のリスク

認知症になってしまった場合、日々の口腔ケアの必要性が理解できなくなったり、うまく口腔ケアを受けられないケースも多くあります。


認知症のリスクは誰にでもあるため、インプラント治療を受ける際は、事前にご家族にも治療について理解してもらい、将来的なサポートについて話し合っておくことが大切です。


経済的な負担

インプラント治療は基本的に自由診療の治療となり、保険適用ができないため、治療にかかる費用は全て患者様の負担となります。歯科医院によって費用は変わりますが、1本あたり30~50万円程度が相場です。


治療費用として、1本あたり30~50万円程度の初期費用がかかり、骨造成などの追加処置が必要な場合はさらに数十万円の費用が増えることがあります。


複数本失っている場合は総額が数百万円になることもあります。


また、継続的な費用として、定期的なメンテナンス費用(3~6ヶ月に1回、1回あたり数千円~1万円程度)やトラブルが発生した場合の修理費用、上部構造(人工歯)の作り替えが必要になる場合の費用なども考慮する必要があります。


ただし、インプラント治療は基本的に医療費控除の対象となるため、確定申告の手続きを行うことで所得税の一部が還付され、費用負担を軽減できる場合があります。


年金生活の方でも医療費控除は利用できますので、領収書は大切に保管しておきましょう。


治療期間の長さ

インプラント治療は期間の長い治療です。埋め込んだインプラントが骨と結合するのを待つ必要があり、個人差はありますが3~6ヶ月ほどかかります。


高齢者の場合、骨との結合に若年層よりも時間がかかる場合があり、その間の通院回数が多くなり身体的・時間的負担が大きくなることがあります。


仮歯の期間が長く食事に制限が続くことや、持病の悪化など健康状態の変化により治療を中断せざるを得なくなる可能性もあるため、治療期間中の生活への影響も考慮して、治療を開始するタイミングを検討することが大切です。


高齢者がインプラント治療を受けるメリット

一方で、インプラント治療のメリットもきちんとあります。


しっかり噛めることによる健康維持

インプラントはあごの骨に人工歯根を埋めて固定するため、天然の歯と同じくらいしっかり噛めます。


高齢になると柔らかく消化の良いものが中心の食生活になりますが、インプラントを入れれば、食べられるものの幅が広がります。


栄養面では、肉や野菜など栄養価の高い食材をしっかり噛んで食べられるようになり、食べ物が細かくすりつぶされることで胃腸の負担を軽減できます。


また、身体機能の面では、しっかり噛むことで顎の筋肉が鍛えられ顔の筋肉の衰えを防ぎ、咀嚼による刺激が全身の血流を促進します。


栄養状態の改善により、足腰などの身体機能を保つことにもつながるため、結果として健康寿命の延長にもつながると考えられています。


認知症リスクの軽減

インプラント治療は単に歯を補うだけでなく、脳の健康維持にも貢献する可能性があります。


日本歯科医師会によると、歯を失った方がインプラントや入れ歯などの義歯を使用しない場合、認知症の発症リスクが最大で1.9倍に跳ね上がる研究結果も出ているようです。


噛むという行動は脳に直接的な刺激を与え、咀嚼筋の動きが脳の血流を増加させます。


噛む回数が少ないと、記憶や空間を認識する認知能力が低下する可能性があることが分かっています。


入れ歯と比べてインプラントの方がしっかり噛めるため、より高い認知症予防効果が期待できます。


咀嚼により視覚や聴覚などの感覚にも刺激を与え脳が活性化されること、食事を楽しめることで生活の質が向上し精神的にも良い影響があることなども重要です。


誤嚥(ごえん)性肺炎の予防

高齢者の肺炎の多くが誤嚥(ごえん)と関連しており、高齢になってからは飲み込む機能も低下していくため、しっかりと噛むことができないことで誤嚥のリスクなどが発生します。


インプラント治療により、しっかり噛めることで食べ物を十分にすりつぶすことができ、飲み込みやすい大きさと形状にすることで誤嚥のリスクを減らせます。


食事に時間をかけることができ、急いで飲み込むことを防げることも重要です。また、栄養状態が改善されることで免疫力が向上し、口腔内を清潔に保ちやすくなることで雑菌の繁殖を抑えられます。


入れ歯のように取り外しがないため、義歯に雑菌が繁殖するリスクも低くなります。


高齢者にとって誤嚥性肺炎は命に関わる重大な問題であるため、その予防効果は大きなメリットと言えます。


会話や外見の改善

インプラント治療により、入れ歯のような金具が見えないため見た目の違和感が少なく、人工歯の色も天然の歯とほぼ変わらず自然な美しさを維持できます。


口元の膨らみや見た目が自然になり若々しい顔貌を保てること、歯が抜けた状態や入れ歯を使うことへの心理的な抵抗がなくなることも大きなメリットです。


会話の面では、発音がスムーズになり会話を楽しむことができ、入れ歯のようにずれたり外れたりする心配がなく人前でも安心です。


食事会や旅行などの社交の場でも気兼ねなく参加でき、孫との食事や会話をより楽しめるようになります。


外見やコミュニケーションの改善は心理面にも良い影響を与え、人との交流が楽しくなることで外出する機会が増え、社会活動への参加意欲も高まります。


高齢者がインプラント治療を成功させるためのポイント

高齢者治療の実績がある歯科医院を選ぶ

高齢者の治療を成功させるためには、経験豊富な歯科医院を選ぶことが重要です。


インプラント専門医や学会認定医が在籍しているか、高齢者のインプラント治療の症例数が豊富か、高齢者特有の不安や懸念に対して丁寧に対応してくれるかを確認しましょう。


設備面では、CTなどの精密な診断設備が整っているか、全身管理ができる体制(静脈内鎮静法など)が整っているか、清潔で安全な手術環境が整っているかが重要です。


また、訪問診療や送迎サービスを提供しているか、駐車場やバリアフリー対応など通院しやすい環境か、治療後の長期的なメンテナンス体制が整っているかも確認しておくとよいでしょう。


持病の管理と内科医との連携

持病がある場合は、かかりつけの内科医に治療の許可を得ること、糖尿病の場合は血糖値を適切にコントロールすること(HbA1c 7.0%以下が目安)、服用している全ての薬について歯科医師に詳しく伝えることが大切です。


必要に応じて服薬の調整について内科医に相談し、血圧や血糖値などの全身状態を定期的にチェックしながら、体調の変化があればすぐに歯科医師に報告しましょう。


日々のメンテナンスと将来を見据えた計画

治療前には、歯科医院で歯磨き指導を受け正しいブラッシング方法を習得し、歯周病がある場合は先に治療を行い改善してから手術を受けることが重要です。


喫煙している場合は、治療期間中は禁煙するか本数を大幅に減らしましょう。


また、将来を見据えた計画として、介護が必要になった場合のメンテナンス方法を事前に検討し、家族や介護者が口腔ケアをサポートできる体制を整えておくことが大切です。


治療費だけでなく長期的なメンテナンス費用も含めて予算を立て、定期的な全身の健康診断を継続し、持病の管理を徹底しましょう。


インプラント治療のご相談は山梨県甲府市の「山浦歯科医院」

インプラント治療には明確な年齢の上限はなく、全身の健康状態や口腔内の条件が整っていれば、60代、70代、80代でも治療を受けることが可能です。


高齢者の場合は骨密度の低下、免疫力の低下、全身疾患の影響、体力的な負担など、若年層にはないリスクがあることも事実です。


また、メンテナンスの難しさや介護が必要になった場合の問題、認知症発症後のリスク、経済的な負担など、老後特有のデメリットも存在します。


一方で、しっかり噛めることによる健康維持、認知症リスクの軽減、誤嚥性肺炎の予防、会話や外見の改善など、高齢者にとって大きなメリットもあります。


実際に高齢者の方々が治療を受けて、食事や会話を楽しみ、生活の質を向上させているケースは多くあります。


山梨県甲府市の山浦歯科医院では、患者様一人ひとりの年齢や健康状態、生活環境に合わせた治療計画をご提案しています。


高齢者の方のインプラント治療についても、豊富な経験と知識をもとに、安心して治療を受けていただけるよう、丁寧なサポートを心がけています。


インプラント治療に関するご不安やご質問がありましたら、お気軽にご相談ください。

​院名

院長

住所

〒400-0031山梨県甲府市丸の内二丁目33-8

電話番号

055-222-2272


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や治療については必ず歯科医師に相談し、適切な診断や治療を受けてください。


参考文献

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