治療概要
患者様詳細 | 診査診断〜セラミッククラウンセットまで |
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治療内容 | |
治療回数 | 5回(診査診断〜セラミッククラウンセットまで) |
治療期間 | およそ3ヶ月 |
来院理由
2軒の歯科医院で「抜歯が必要」と診断され、来院。
実施した治療
術前の状態
患者さんは左下6番の歯について、2軒の歯科医院で「抜歯が必要」と診断されました。
1軒目の診断:「根の分岐部に歯周病が進行しているため抜歯」
2軒目の診断:「根分岐部が割れている可能性が高いため抜歯」


レントゲンを見ると、確かに根分岐部に大きな骨吸収像(骨が溶けている部分)が確認できます。しかし、ここで疑問が生じました。
本当に根分岐部が割れているのか? また、これは歯周病によるものなのか?
精密診断による再評価
治療方針を決定する前に、精密診断を実施し、レントゲンに加えて、CT撮影やプロービング(歯周ポケットの測定)を行い、より立体的・精密に診断しました。

1. CT画像のチェック
根分岐部の骨吸収は確認できるが、歯根破折を疑う決定的な線状の像は認められない
CTであっても非常に小さな破折は映らないことがありますが、今回の症例では明確な破折像は見当たりませんでした。
2. プロービング(歯周ポケット測定)
歯周ポケットが極端に深い箇所はなく、重度の歯周病(分岐部病変)ではないことが判明
3. 根の先端(根尖)の状態
根尖(根の先端)から根分岐部に向かって透過像が広がっている
これは、過去の根管治療の不良が原因で感染が広がっていた可能性が高い
結論としてこの歯は抜歯する必要はなく、適切な根管治療で治せる可能性が高いと判断しました。
精密根管治療の実施
このケースでは、顕微鏡下での精密根管治療を行いました。



結果として、術後の経過は良好で、患者さんは抜歯を回避できました。
術後の経過
治療後14か月が経過し、再評価を行いました。

根分岐部の骨吸収が大幅に改善し、骨が再生
患者さんの症状は完全に消失
噛み合わせの問題もなく、歯はしっかりと機能を維持
なぜ「抜歯」と診断されたのに残せたのか?
歯の保存が可能かどうかは、診断の精度と治療技術に大きく左右されます。
特に、根管内の状態や歯周組織の正確な把握には、CT撮影やプロービング、そして精密な治療器具(マイクロスコープなど)が重要です。
主な診断の相違要因
レントゲンだけで判断されるケース
レントゲン写真は平面的な情報しか得られないため、破折や骨吸収の範囲などが正確に把握しにくいことがあります。
歯周病の進行具合の評価方法の違い
プロービング(歯周ポケット測定)を十分に行わないと、歯周病がどの程度進行しているのか見落とす可能性があります。
根管治療の知識・技術の習熟度
根管治療は極めて精密さが要求されるため、マイクロスコープなどの設備や経験によって結果が異なることがあります。
保険診療の範囲内での難しさ
保険診療では治療に用いる材料・機材や検査項目に制約がある場合があります。
注意事項
本記事の内容は、あくまでも一症例の紹介であり、すべての患者様に同じ結果が得られることを保証するものではありません。
治療方針は個々の患者様の状況によって大きく異なります。
一部保険適用の場合を除き、自費診療となります。
抜歯をすすめられたら、セカンドオピニオンを!
歯を失うと、噛み合わせや咀嚼機能に大きな影響が出ます。
インプラントやブリッジなどの補綴治療が選択肢として挙がる場合もありますが、自分の歯を残せる可能性があるならば、慎重に考えたいところです。
今回のケースのように、抜歯しかないと言われても、適切な診査・診断によって歯を残せる可能性は十分にあります。
もし「抜歯が必要」と診断された場合は、すぐに決断せず、セカンドオピニオンを受けることをおすすめします。
当院では、顕微鏡やCTを活用した精密な診査と高度な根管治療を提供し、できる限り歯を残す治療を行っていますので、「抜歯と言われたけれど、歯を残したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。